河村勇輝は「アメリカのバスケに慣れることが優先事項」 NBAグリズリーズの番記者が占う今季 (2ページ目)
【Gリーグで馴染むことが最優先事項】
そんなチームからエグジビット10契約を受け取ったユウキが今季、どんなシーズンを過ごすことになるかはまだわかりません。
ここで予想しておくと、やはりまずは(マイナーリーグに当たる)Gリーグに送られ、グリズリーズ傘下のハッスルの選手として育成されることになるのでしょう。
ジョン・コンチャー、ジェイク・ラレビア、サンティ・アルダマ、スコッティ・ピッペンJr.といった選手たちもGリーグのメンフィス・ハッスルで多くの時間を過ごし、今ではグリズリーズで戦力として考えられるようになりました。ほかにも同じようなプロセスを辿った選手はたくさんおり、グリズリーズは選手育成に自信を持っています。
ユウキも同じようにGリーグのハッスルで腕を磨き、周囲の向上も助けることになると思います。その上で、シーズン中にでもグリズリーズ、あるいは他のNBA29チームからコールアップされるのを待つことになるのではないでしょうか。
現在、グリズリーズの3つのツーウェイ契約枠(NBAとGリーグを行き来できる契約の選手枠)は埋まっていますが、もしもピッペンJrが本契約に格上げされた場合、ツーウェイ契約に空きができます。そうなった際にはユウキにツーウェイ契約が与えられても不思議ではありません。その場合、グリズリーズでのNBAデビューは早まるはずです。
もっとも、たとえツーウェイ契約選手になったとしても、今季のユウキは多くの時間をGリーグで過ごすことになるという見方に変わりはありません。例えばモラントが故障するか、ハードスケジュールのなかで休養する時など、ユウキにも少なからずのプレー時間が与えられるゲームもあるかもしれません。それでも、まずはGリーグで長い時間をプレーし、アメリカのバスケに慣れることが最優先課題になるのではないでしょうか。
ユウキがこれから先もグリズリーズ傘下の組織に残るとして、将来的なベストのシナリオは、控えのプレーメイカーとしてのポジションを確立することでしょう。
これまでのチームは得点源のジャ・モラント、そのバックアップを務めていた選手がコートを出ると、オフェンスが停滞してしまうことが頻繁にありました。ジョン・コンチャーは堅実なロールプレーヤーですが、ポイントガードの役割を務めた際のプレーには限界が感じられました。
その点、ユウキは違います。自身が多くの得点を挙げるわけではないにしても、コート上の選手たちを得点に巻き込み、イージースコアリングの機会を生み出すことができる優れたプレーメイカーです。ユウキがそんな存在になっていければ、グリズリーズにとっては大きなことであり、さらにいいチームになるための助けになるはずです。
アメリカでの日々はまだ始まったばかり。ユウキの適応とキャリアの推移を今後、私もしっかりと見守っていきたいと思います。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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