NBA伝説の名選手:カーメロ・アンソニー「天性の得点感覚を持つ21世紀のNBAを代表するピュアスコアラー」 (3ページ目)
【五輪代表として3個の金メダル獲得】
オリンピックには4大会連続出場で3個の金メダルを獲得している photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
当たり負けしない強靭なフィジカルを持つカーメロには芸術的なジャブステップをはじめとする数多くのスキルがあり、力強いドライブやバリエーション豊富なポストプレー、磨き抜かれた巧みなミッドレンジジャンパーと3ポイントも備わっていた。
「バスケットボールで点を取ることは簡単じゃない。俺たちは簡単そうにやっているように見えるかもしれないけど、実際はそうじゃないんだ。俺としては19年間やってきたことの繰り返しなんだ。毎晩、日々欠かさずやってきた。俺がゲームにどんなことを持ち込めるのか、ゲームでどんなアプローチができるのか、そこには俺のプロフェッショナリズムがある」
大ベテランとなっていた2021年にそう話していたように、カーメロにはスコアリングに対する美学がある。なかでもカーメロが繰り出すスムースかつ美しいプルアップジャンパーは印象的。勝負どころでもフォームが崩れることはなく、当然のように幾度も沈めてきた。NBAキャリアを重ねるごとに進化させてきたミッドレンジジャンパーを、カーメロはこう語る。
「とにかく練習すること。毎日たくさんシュートするんだ。夏の間、俺はずっとそうやってきた。で、できるだけ走り込んで自分を疲れさせるんだ。そこから足が疲れているなかでジャンプショットの練習に取り組むのさ」
磨き抜かれたスキルの数々で観客を魅了してきたカーメロは、NBA選手たちにも大きな影響を与えてきた。現在レイカーズでプレーする"日本の至宝"八村塁は、2020年に初対決を終えて「僕が最初に好きになって、ずっと見てきた憧れの選手」と語り、引退表明後には「メロ、あなたは僕が成長していくなかで大好きな選手でした。あなたの動きやすべてを真似ようとしてきました。インスピレーションを与えてくれてありがとう」と、最大級の賛辞を送っていた。
また、今年2月に通算得点で"カーメロ超え"を果たしたケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)も「カーメロには13、14歳の頃から憧れてきた。その彼と得点で同じカテゴリーに入ることができてうれしいね」と話していた。
現在、アメリカ代表は大会5連覇をかけたパリ五輪に向けて調整中。カーメロとデュラントは、同代表で最多タイとなる3つの金メダルを手にしてきた。オリンピックの通算得点では435得点でデュラントが歴代1位、カーメロが336得点で同2位にいる。
ただし、オリンピックの1試合最多得点記録を保持しているのはカーメロ。2012年ロンドン五輪のナイジェリア代表戦で、わずか14分間の出場ながら面白いようにショットがリングへ吸い込まれ、なんと37得点を記録した。
NBA優勝こそできなかったものの、カーメロはNCAAトーナメントを制し、アメリカ代表として金メダルを3つも獲得してきた。それに現時点でNBA史上10本の指に入るスコアラーなのだから、近い将来バスケットボール殿堂入りすることは間違いない。
【Profile】カーメロ・アンソニー(Carmelo Anthony)/1984年5月29日、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。シラキュース大出身。2003年NBAドラフト1巡目3位指名。
●NBA所属歴:デンバー・ナゲッツ(2003-04〜10-11途中)―ニューヨーク・ニックス(10-11途中〜16-17)―オクラホマシティ・サンダー(17-18)―ヒューストン・ロケッツ(18-19)―ポートランド・トレイルブレイザーズ(19-20〜20-21)―ロサンゼルス・レイカーズ(21-22)
●NBA王座:0回
●主なスタッツリーダー:得点王1回(2013)
●アメリカ五輪代表歴:2004年アテネ五輪(3位)、08年北京五輪(優勝)、12年ロンドン五輪(優勝)、16年リオ五輪(優勝)
*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)
著者プロフィール
秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)
フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。
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