全米の話題を独占するケイトリン・クラークがWNBA入り 「女性版ステフィン・カリー」が女子スポーツの歴史を変える (3ページ目)
【クラークのWNBA入りは歴史的転換機に】
クラークはプロへ行く決断を下し、現地4月15日のWNBAドラフトでは全体「いの一番」でインディアナ・フィーバーから指名を受けた。フィーバーのみならず、WNBAリーグ全体がクラークの加入によるリーグの人気の大幅な引き上げに期待をしている。
「クラーク・エフェクト」「クラーコノミクス」なる言葉がある。前者はクラークによる「効果」、後者はクラークと「エコノミクス」を併せた造語だ。ともに彼女がもたらす思考効果、経済効果を表している。
アイオワ大でビジネス分析学を専門とするジェフ・オールマン准教授によると、最大観客収容人数が1万4998人の同大バスケットボールアリーナで、クラーク入学前年に7012人だったホーム試合の平均観客数は、彼女が登場すると年々伸び続け、2023−24シーズンには1万4998人、つまりは全試合で完売したという。また、「クラーク前」に29ドルだったホーム試合の平均チケット価格も「クラーク後」には98ドルにまで値が跳ね上がったそうだ。
アイオワ州の調査機関は、クラークのアイオワ大在学中に同州へもたらしたGDP(国内総生産)の伸びは約1440万ドル(約22億円)から5230万ドル(約80億円)の間だと算出している。
WNBAでも、クラークの加入によりチケット需要が大きく高まるのは必至だ。その傾向はドラフト前からすでに顕著で、価格が需要によって変動するリセール価格で例年は20-30ドル程度の最低価格が、クラーク効果で120−140ドルといったところにまで上昇している。フィーバーのシーズン開幕戦は5月14日のコネチカット・サンとのアウェー戦だが、そのリセール価格はクラークがプロ入りを表明した時点から9割以上も上昇。また同16日のニューヨーク・リバティとのホーム開幕戦のそれも5割以上、価格が上がったという。今季で28年目となるWNBAの歴史においても異例であるというのが、現地メディアの論調だ。
1979年のNCAA男子決勝戦で、マジック・ジョンソンのミシガン州立大とラリー・バードのインディアナ州立大が対戦し、24.1%という史上最高のテレビ視聴率(アメリカのバスケットボールの試合としては未だに破られていない)を記録している。2人が直後にNBA入りすると、ファイナルですらも深夜に録画放映がされていたNBAの人気を爆発的に高めたことは、リーグ史のなかでも最重要な事象とされる。クラークのプロ入りは、WNBAにとっての「マジックーバード」のような歴史的転換点になるだろうと言われる。
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