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全米の話題を独占するケイトリン・クラークがWNBA入り 「女性版ステフィン・カリー」が女子スポーツの歴史を変える (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【クラーク人気が沸騰した背景と環境】

 NCAAは、アマチュアリズムの観点から長らく学生選手がスポーツ活動からの対価を得ることを禁じていた。ところが、一部の選手たちが自分たちの名前や肖像を使って大学側のみが収益を懐に入れ、選手たちにそれを分配しないのは反トラスト法(日本でいう独占禁止法)に違反するとして連邦裁判所に提訴した。その流れを受け、2021年のカリフォルニア州を皮切りに多くの州で「NIL法」が導入されるようになった。NIL(エヌ・アイ・エル)とは「Name, Image and Likeness」の略称で、学生選手たちは自分たちの「氏名、イメージおよび肖像」を使ってお金を稼ぐことが容認されるようになったのだ。

 NILの導入は、アメリカの大学スポーツの歴史において大きな転換点となった。男子バスケットボールでは、高校卒業から直接NBAへ行くことはルール上できないためトップクラスの選手たちが大学に1年だけ籍を置いてからプロ入りする「one and done」(ワン・アンド・ダン/1年で終わりの意)の例が散見されていたが、「NIL後」は大学にいながらにして収入を得られるために学校に残る選択をする選手が増えた。ただし、女子の場合は22歳になる年(外国人の場合は20歳)になるまでプロのWNBAドラフトにエントリーする権利が与えられないため「ワン・アンド・ダン」は原則、起こらない。

 しかも、新型コロナウイルスの影響が及んだ2020−21シーズンに所属した選手たちは1年長く大学に残ってプレーを継続できる権利が与えられている(ネブラスカ大の富永啓生もこの制度を使って5年間プレーした)。そのため、NILで多額の金額を得られるクラークらの女子バスケットボール選手たちが、基本年給が7万6000ドル(約1165万円)のWNBAに行くよりもはるかに多くの金額を手にすることができる大学に残る選択を取るかどうかも、メディアやファンの話題となってきた。

 クラークのSNSのフォロワーを見るとX(旧ツイッター)が約30万人、インスタグラムが約187万人となっている。例えばWNBAのトップスターであるエイジャ・ウィルソン(エイシーズ)のXとインスタグラムのフォロワーはそれぞれ約18.7万人、85.1万人、サブリナ・イオネスク(ニューヨーク・リバティ)の場合はそれぞれ15.8万人、118.4万人だから、クラークの人気の様子がわかる。

 ゆえに、クラークに関してはプロへ行ってもチームから得られる年俸以外に、相当な数の企業からスポンサードを受け、変わらず多額の金額を受け取ることは想像に難くないのである。

 WNBAは男子におけるNBAのように「世界最高峰の女子バスケットボールリーグ」と銘打たれる一方で、夏場の約3カ月という短い期間であるとはいえ、その市場規模はNBAと比べるとかなり小さい。年間のリーグ収益が約100億ドル(約1兆5330百億円)のNBAに対し、WNBAは約6000万ドル(約92億円)と大きな開きがある。それぞれのリーグの最高年俸選手を比較しても、NBAが先述のカリーの5191万ドル(約79億6000万円)で、WNBAはジャッキー・ヤング(ラスベガス・エイシズ)の25万2450ドル(約3869万円)と、こちらもケタがまったく違っている。

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