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パリ五輪女子バスケ世界最終予選MVP・山本麻衣が振り返る、あのプレー「ルーズボールは本能、シュートは冷静に打ちました」

  • 三上 太●text by Mikami Futoshi

日本の3大会連続五輪出場の原動力となった山本麻衣 photo by FIBA日本の3大会連続五輪出場の原動力となった山本麻衣 photo by FIBAこの記事に関連する写真を見る

山本麻衣インタビュー(前編)

女子バスケットボール日本代表が2024年パリ五輪の出場を決めた。世界4カ所で同時期に行なわれるオリンピックの世界最終予選大会(以下、OQT)。日本が組み込まれたハンガリーラウンドは「死の組」とも呼ばれ、事実、最終日を前に4カ国が1勝1敗で並ぶ激戦となった。最終日に世界ランキング9位の日本が対峙するのは、同5位のカナダ。結果は86-82で日本が勝利し、オリンピックの切符を自ら手に入れるのだが、その立役者のひとりが、ハンガリーラウンドでMVPを獲得した山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)である。24歳の若きスコアラーは、いかにして、この大一番を迎え、乗り越えたのか――。

【チーム全員の共通理解で走り勝つ】

――パリ五輪の出場を決めました。その予選、OQTをどのように振り返りますか。

「OQTはオリンピックをかけた戦いなので、それほど簡単なものではないなと改めて感じました。それでも『死の組』と呼ばれるグループを首位で通過できたのは、チーム全員で、お互いを信じ合いながら、自分たちの強みを理解して、戦い抜いた結果だと思います」

――東京五輪後に就任した恩塚亨ヘッドコーチが率いる女子日本代表の強みは、どこにあるのでしょう?

「走り勝つのが日本のスタイルであり、強みだと思います。もちろん相手は自分たちに分があるフィジカルコンタクトで私たちの体力を削ってきます。そのため思うように走れない、重たい展開になることもあったんですけど、それでも第4クォーターの最後の最後まで走りきることや、ただ単に走るだけではなく、スピードに乗って走るなかでも、常に周囲の状況を見て、瞬時に適切な動きを判断するところまで練習してきたので、そうした日本の強みが表れたのかなって思います」

――山本選手は、小学校、中学校、高校、そして現在所属するトヨタ自動車アンテロープスも含めて、各カテゴリーの国内トップクラスのチームでプレーしてきました。ただ走るだけではない、状況判断をしながら走ることは特別なことなのでしょうか?

「特別ではないけど、全員の共通理解として、チームでどんな正解があるのかを探しながら取り組み、みんなで共通理解できたことが大きかったんじゃないかと思います」

――恩塚ヘッドコーチ体制になって以降、ほぼメンバー入りをしている山本選手であっても、それを短期間で積み上げていくことは簡単ではないと思います。

「最初は息が合わないこともありましたし、逆にみんなが理解しすぎて、周りを見すぎてバランスが悪くなることもありました。それはハンガリーに入ってからも続いていて、OQTが始まってから、試合の中で整理していったので、最終的にはカナダ戦で、現状の最もいい形になったんじゃないかと思います」

――パリ五輪に向けて、より高めていくと思いますが、OQTに関しては、チームとしてのピークを持っていけたというわけですね?

「はい。まだまだ改善点はたくさんあると思いますけど、合宿中にやろうとしていたことは、OQTの最後のカナダ戦までにはしっかりピークを持っていけました。やはり相手は日本の3ポイントシュートを嫌がるんです。それを止めるためにスイッチディフェンス(マークする選手を、交差するタイミングで換えること)をしてきます。敗れたハンガリー戦は、スイッチされたことで日本のバスケットが重たくなったことも敗因のひとつでした。カナダ戦ではそこを改善して、スイッチに対しての攻め方を改めて共通理解ができて、それがプレーにも表れたのだと思います。

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著者プロフィール

  • 三上 太

    三上 太 (みかみ・ふとし)

    1973年生まれ、山口県出身。2004年からバスケットボールを中心に取材・執筆をする187センチの大型スポーツライター。著書に「高校バスケは頭脳が9割」(東邦出版)、共著に「子どもがバスケを始めたら読む本」、「必勝不敗 能代工バスケットボール部の軌跡1960-2021」(いずれもベースボール・マガジン社)があり、構成として「走らんか! 福岡第一高校・男子バスケットボール部の流儀」(竹書房)がある。

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