八村塁の穴は誰が埋めるのか? バスケ日本代表がワールドカップで勝つために不可欠なピース (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

【インサイドで八村タイプは?】

「みんなが(八村の不在を埋めるべく)少しずつステップアップしないといけない。だから、八村がいないとか誰かがいないとかじゃなく、全員がもっと頑張ってほしいです」

 八村の出場辞退について問われたホーバスHCは、そのように話している。

 チャイニーズタイペイとのシリーズは、シーズンが終わってしばらく時間も経過し選手たちのコンディショニングも十全に整わず、かつ相手が格下であることを考えれば、その結果自体に大きな意味を見出すことはできない。

 それでも八村の辞退によって、とりわけインサイド陣でのポジション争いが一層、激化することとなる。選考の「ボーダーライン」にいる選手たちにとっては、このシリーズも自身の存在を示すための重要な選考レースのはずだ。

 この2試合でもっとも光を放ったのは、吉井裕鷹(SF/アルバルク東京)だった。吉井は1試合目に11得点、2試合目にチーム最多の16得点を挙げたが、オフェンスリバウンドからのレイアップやキャッチアンドシュート(パスを受けてからの速射)による3P、スティールからのダンクなど、インサイドとアウトサイドの両方で暴れた。

 吉井は将来を見越して、プロ入り前からオールラウンダーとしての技量を磨いてきた。だが一方で、動きはけっして滑らかではなく器用なタイプとは言えない。むしろ彼の最大の魅力は接触を恐れず、自分から相手選手に対して体をぶつけにいくところだ。

 日本代表の面子を見渡すと俊敏で器用なタイプの選手が多いものの、体をゴリゴリとぶつけながらプレーする選手もチームにとってなくてはならない。その意味では、もっとも八村に似通ったプレースタイルを持っているのが「無骨な働きをする」吉井だと言えるかもしれない。

 吉井はプレーだけでなく、言葉も無骨だ。そしてそれが不思議な魅力にもなっている。

 昨夏のワールドカップ・アジア地区予選ウインドウ4。テヘランでのイラン戦と沖縄でのカザフスタン戦で、吉井は3Pを計6本放つが1本も沈められず、そのほかのシュートでもフィニッシュの精度を欠いた。

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