2018.07.01

アフリカ→日本→NBAと歩んだ男が、
「レフェリー殴打事件」に思うこと

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 延岡学園バスケットボール部の男子留学生がレフェリーを殴打した事件は、スポーツ界に大きな衝撃を与えた。その映像がSNS上で広く拡散されたこともあって騒ぎは拡大。同校は全国高校総体の出場辞退を表明し、事件を起こしたコンゴ人留学生の帰国が発表された。

 この件について、2008年から3年間、岡山学芸館高校に留学し、現在はプロ選手として活躍するモーリス・ンドゥールに意見を求めた。

高校3年間を日本で過ごした、元ニューヨーク・ニックスのンドゥール セネガル出身のンドゥールは、同校のバスケットボール部員して全国大会にも出場。2年連続で岡山県の最優秀選手に選出され、”スーパー留学生”と呼ばれた。その後、2016~2017シーズンにはニューヨーク・ニックスの一員としてNBAでも活躍するなど、日本に来た留学生のなかでも最高級の充実したキャリアを過ごしている。

 今でも流暢に日本語を操り、全部で6つの異なる言語を話すというンドゥール。「日本という国は僕をより良い人間にしてくれた」という言葉からは、バスケ人生の礎(いしずえ)となった国への熱い想いが伝わってくる。

その一方で、日本における留学生の受け入れ態勢の物足りなさ、準備の欠如に関しては思うところもあったという。

 延岡学園の事件の原因を、周囲のサポート、準備不足だけに結びつけるつもりはない。ただ、留学経験者であるンドゥールのリアルな証言からは、外国人を受け入れる学校側にも少なからず問題があることが見えてくる。

――延岡学園バスケットボール部の事件を知ったとき、どう思いましたか?

「日本の高校バスケ界であのような事件が起こったことには驚かされた。もちろん支持はできないし、彼は間違ったことをした。スポーツの世界においてあんな事件を許容する余地はない。さまざまな思いが蓄積した結果だったんじゃないかな。タイミングの悪さも手伝って、内側に溜め込んでいたものが爆発してしまったんだと思う。

 ただ、もう事件は起こってしまったのだから、その事実を変えることはできない。今後にできるのは両者が話し合い、いい方向に向かうこと。実際に、選手はレフェリーに謝罪し、レフェリー側も被害届は出さないと聞いている。この事件を契機に関係者たちは一丸となってほしい。その先、『あのつらい事件がいい結果を導き出した』と言えるようになればいいと思う」