【NBA】シーズン総括。レブロン・ジェームズはついに「神」になった

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro, AFLO

マイケル・ジョーダン以来となる2年連続シーズン&ファイナルMVPを同時受賞したレブロン・ジェームズマイケル・ジョーダン以来となる2年連続シーズン&ファイナルMVPを同時受賞したレブロン・ジェームズ 2012-13シーズンのNBAは、マイアミ・ヒートの2連覇で幕を閉じた。チャンピオンチームとして開幕を迎え、レギュラーシーズンでは歴代2位となる27連勝を記録し、ファイナルは2勝3敗の劣勢から逆転して再び頂点へ――。まさにヒートに始まり、ヒートに終わったシーズンだったと言えるだろう。ロックアウトの影響を受けた昨シーズンとは対照的に、大いに盛り上がった今シーズン。「ミスター・バスケットボール」佐古賢一氏に振り返ってもらった。

 今シーズンを振り返るにあたり、まずは『激動のファイナル』について触れないわけにはいきませんよね。ともかく、「非常に面白かった」のひと言に尽きます。こんなにも観ていてハラハラしたのは、久しぶりじゃないでしょうか。改めて、勝ったマイアミ・ヒートはもちろんのこと、負けたサンアントニオ・スパーズにも賞賛を送りたいと思います。「自分たちのバスケットを貫く強さ」を感じた両者の戦いでした。

 そしてファイナルを終えた今、思うのですが、レブロン・ジェームズはついに、「キング(王様)」から「ゴッド(神様)」になったのではないでしょうか。クリーブランド・キャブス時代、マスコミから「プレッシャーがかかるとプレイの止まるレブロンは病気か?」と揶揄(やゆ)されていましたが、そんな過去のイメージを完全に吹き飛ばしたと思います。特に印象的だったのは、ファイナル第7戦。ものすごいプレッシャーの中、レブロンはアウトサイドからのジャンプシュートをことごとく決めました(3ポイント5本を含む37得点は、ファイナル第7戦の歴代最高得点タイ記録)。スパーズのポポヴィッチHCは、ファウルになるリスクを回避すべく、あえてレブロンに対してマークの距離を空ける作戦で挑みました。選手はアウトサイドでスペースを十分に空けられると、意外とプレイしづらいもので、シュートを外しがちになるものなんです。しかしレブロンは、第7戦という緊迫したシチュエーションにもかかわらず、何度も決定的なシュートを沈めていました。どんな状況に置かれても仕事をまっとうしていた今シーズンのレブロンは、ちょっと違う次元の選手になったなと思います。ファイナルでのトリプルダブル2回はマジック・ジョンソン以来、2年連続でシーズンMVP&ファイナルMVPの同時受賞はマイケル・ジョーダン以来と、レブロンという選手は、もはや伝説の選手を引き合いに出す以外に語れない存在になりましたね。

 それでは改めて、今シーズンを振り返りたいと思います。まず、レギュラーシーズンで印象に残ったチームは、デンバー・ナゲッツ(ウェスタン3位)とロサンゼルス・クリッパーズ(ウェスタン4位)、そしてニューヨーク・ニックス(イースタン2位)ですね。まず、ナゲッツは自分の予想を上回るぐらい、レギュラーシーズンで圧倒的な強さを披露していました。しかしプレイオフ1回戦で、ゴールデンステート・ウォリアーズに2勝4敗で敗退。勢いがあっただけに、ナゲッツはポストシーズンの難しさを痛感したのではないでしょうか。一方、昨シーズンから推しているクリッパーズも、やはりプレイオフを勝ち上がるには、もうひとつスパイスが足りないんだと感じましたね。そして久々に上位に顔を出したニックスも、単発の強さはあるものの、チーム全体で戦えるスタイルが構築できないままシーズンを終えてしまった印象です。3チームともシーズンを大いに盛り上げてくれたので、来シーズンのさらなる飛躍に注目したいです。

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