【NBA】ノビツキーが「うっとうしいヒゲ」を剃れない理由
あご全体を深く覆うほどヒゲが伸び放題となっているマーベリックスのダーク・ノビツキー(右)「まったく、クレイジーなシーズンだ」と、ダーク・ノビツキーは嘆く。
もっとも、彼の口調からは、「嘆く」と表現するほどの感情はうかがえない。取材に答えるときのノビツキーは、良いときも悪いときも、ほとんど感情を表に出さず、淡々と状況を説明するかのように語るからだ。
それでも彼の表情からは、その語り口の裏側にある苦悩が見て取れた。何よりもまるで、孤島で長年生活していたかのように伸びたヒゲが、「クレイジー」なシーズンを象徴していた。
ダラス・マーベリックスであごヒゲを長く伸ばしているのは、ノビツキーだけではない。マブスの選手たちはシーズン半ばから、そろってヒゲを伸ばすようになった。もちろん、ファッションで伸ばしているのではなく、それは「チーム結束の印」。状況が悪い中でも、最後まで諦めずに戦い続けるという、誓いの思いが込められていた。
「ヒゲによる結束」は、もともとヒゲをたくわえていたO.J.メイヨとビンス・カーターが、「勝率を5割に戻すまでヒゲを整えない」と、誓い合ったことから始まったのだという。やがて、ノビツキーら数名の選手たちが加わり、そろってヒゲを伸ばし始めた。今年の1月下旬、チームの成績が7試合ほど5割を下回っていたころのことだ。
今季のマブスは、開幕前から厳しいスタートを強いられた。夏に大物FA選手を獲得するため、サラリーキャップに余裕を作っていたのだが、狙っていたデロン・ウィリアムス(ブルックリン・ネッツ)を取り逃がし、自チームでFAだったジェイソン・キッド(ニューヨーク・ニックス)やジェイソン・テリー(ボストン・セルティックス)との再契約も結べなかった。2年前の優勝時メンバーで今も残っているのは、ノビツキーを含めて3人にまで減ってしまった。
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