【NBA】レブロン悲願の初優勝。その笑顔の裏に秘められた思いとは? (2ページ目)

  • 永塚和志●文 text Kaz Nagatsuka
  • photo by AFLO

 そんな経験を踏まえたレブロンは、今季、バスケットボールの技術的にも、弱かった精神的にも、自らを変えようと注力した。技術的には元ヒューストン・ロケッツの名センター、アキーム・オラジュワンから、ゴールにより近い場所から得点できるようなポストアップの仕方を教わった。さらにオフコートでは、プレイオフ中も合間に読書をする習慣をつけるなど、気持ちのコントロールを図るように努力した。『What a difference a year makes.(1年がこれほどの変化をもたらすとは)』。アメリカの新聞は、今季のレブロンをこう評した。昨年のファイナルから今季にかけて、レブロンはまさに、そんな決まり文句がピッタリなほど成長していった。

 その結果、レブロンはプロ9年目にして、ようやく初めてNBAの頂点に立つことができた。ファイナルの5試合では、平均28.6点・10.2リバウンド・7.4アシストと、突出した成績をマーク。さらに大詰めとなった最終戦でも、ファイナル史上6度目となるトリプルダブル(26点・13アシスト・11リバウント)を記録し、文句なしのファイナルMVPに選ばれた。

「人生で最良の日だ」

 紆余曲折を経て、頂点を極めた27歳は試合後、そう語った。一昨年、ヒートへの移籍会見で「獲得するリングは、ひとつやふたつではない」と大風呂敷を広げ、ファンのひんしゅくを買った態度とは、対照的である。だが今年、レブロンはようやく『ひとつ目のリング』を手に入れた。

 ファイナル終了後、テレビのインタビューで元ヒートのシャキール・オニールがこう聞いた。「リングをひとつ穫って満足ですか?」。レブロンは即答する。「いや、まったくです」

 王者となるまでに、マジック・ジョンソンやマイケル・ジョーダン、コービー・ブライアントといった多くのスーパースターよりも、長い年数を要してしまったレブロン・ジェームズ。ようやく今、彼らと同じ歴史に名を刻む権利を得たのかもしれない。

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