【NBA】ニックスを救った台湾系アメリカ人、ジェレミー・リンのすごさとは? (2ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by Getty Images,TOBI(sako)

「リンの活躍でアジアのマーケットが拡大するかも」と期待を膨らませる佐古氏「リンの活躍でアジアのマーケットが拡大するかも」と期待を膨らませる佐古氏 NBAの世界でアジア人は、どうしてもワンランク下に評価されてしまいます。しかしリンのおかげで、アジアのマーケットの評価が、これからグンッと上がるような気がするんですよ。かつてはヨーロッパのマーケットも、NBAではまったく評価されていませんでした。しかし、ブラデ・ディバッツ(セルビア)がロサンゼルス・レイカーズで奮闘し、さらにトニー・クーコッチ(クロアチア)がシカゴ・ブルズで活躍したことで、ヨーロッパの選手もようやく認められるようになったのです。クーコッチがNBAでブレイクして20年――。ヨーロッパのマーケットがNBAの世界で拡大したように、これを機にアジアのマーケットが広がっていく可能性も十分あるんじゃないでしょうか。これはすごく嬉しいことですよね。

 余談になりますが、僕が23歳のリンと同じ年齢のころは、ユニバーシアードでアレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・76ers)と対戦した時期だったと思います。たしかアイバーソンがジョージタウン大の1年生。アイバーソンと初めて対戦したときは、「これがNBAなんだ!」と痛感しました(笑)。プロ入りしてすぐに得点王になる選手は、やっぱり違っていましたね。

 このときのアメリカ選抜チームは、ハンパじゃないぐらいすごかった。ティム・ダンカン(サンアントニオ・スパーズ)、レイ・アレン(ボストン・セルティックス)、ケリー・キトルズ(元ニュージャージー・ネッツ)......。みんなNBAに入ったとたん、各チームのエースになりました。だから、この対戦後にシアトル・スーパーソニックスからキャンプの誘いがあったんですけど、「一緒にプレイしたいけど、あんなすごい奴らばかりいるのか......」と思いました。リンと同い年のころは、NBAのすごさを認識させられた時期でしたね(笑)。

 話が逸れてしまいましたが、リンのプレイは個人的に大好きです。ドライブは気持ちいいし、チャージを受けようが関係なくゴールを狙いに行く姿勢もいい。あれだけガツガツとインに食い込んでいくアジア人は、そういないですからね。特に日本人は遠慮しがちなので(笑)。日本人選手にはぜひ、リンのようにどんどんアメリカでアタックしてほしいです。そしていつしか、リンのようにNBAで活躍してほしいですね。

(※注釈)ティアドロップ=オーバーハンドのレイアップシュートで、下からボールを持ち上げる、いわゆる普通のレイアップと違い、ジャンプシュートのようにボールを放つことで、ふんわりと浮かせたシュートのこと

取材協力:WOWOW
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著者プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

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