2012.03.20

【NBA】ニックスを救った台湾系アメリカ人、ジェレミー・リンのすごさとは?

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by Getty Images,TOBI(sako)

無名のアジア人から一躍、ニューヨークのヒーローとなったジェレミー・リン ダラス・マーベリックスからタイソン・チャンドラーを獲得し、アマーレ・スタウダマイアー、カーメロ・アンソニーと『ビッグ3』を結成したニューヨーク・ニックス。期待された今シーズンでしたが、いざ開幕すると、思うようにビッグ3は機能しませんでした。さらにカーメロとチャンドラーがケガで離脱し、ニックスは予想外の下位に転落。そんな最悪な状況で突如現れたのが、台湾系アメリカ人選手の23歳、ジェレミー・リンです。

 すでにご存知だと思いますが、リンは出場するやいなや大ブレイクしてニックス7連勝の立役者となり、無名だったアジア人は一躍、ニューヨークのヒーローとなりました。しかしリンは、決してエリート街道を歩んできた選手ではありません。2度もチームを解雇されながら、ようやくニックスに拾われ、カーメロとチャンドラーが負傷したわずかなチャンスを掴み取った苦労人です。そんな苦しい道のりを見て、僕は「これこそアジア人がNBAで成功する見本だ」と思いました。

 リンの良さは、爆発的なスピードがなくとも緩急で勝負できる巧みなドライブや、今はNBAで当たり前となったティアドロップ(※注)など、バスケットボールに大切な技術を身につけている点だと思います。これは、フィジカル面で劣る日本人が身につけないといけない技術だと感じましたね。しかも、リンの身長は191センチ。同じアジア人のヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツの中国人センター/身長229センチ)のように、体格で勝負している選手ではありません。190センチぐらいの選手は、アメリカにはゴロゴロいますから。でも、そんな厳しい競走を勝ち抜けたのは、リンがアメリカで苦労し、下積みを重ねてきたからだと思うのです。エリートとして歩んでいたら、このように遠回りして成功することはできなかったのではないでしょうか。

 しかもリンは、アメリカ人にはない、プレイの『間』というのを持っています。アメリカ人は勝負どころになると、自分のリズムでプレイする傾向があります。しかし、アジア人には、『周りとアジャスト(調整)しながら自分を生かす』という良さがあって、リンはそれをうまく生かしていると感じました。僕が考えるに、アジア人的な『間』を持っていて、かつ結果を出していける選手は、総じて『バスケットIQ』が高いと思うのです。

 過去の選手で言えば、ユタ・ジャスのジョン・ストックトン。現役選手なら、ロサンゼルス・クリッパーズのクリス・ポール。彼らは独特の『間』を持っていて、周囲の選手を生かしながらも、勝負どころでは自分で得点を取れる選手たちです。ニックスを救ったときのリンは自らの得点でフォーカスされましたが、パスやアシストでもっとボールを周囲に散らせるようになれば、ストックトンやクリス・ポールの域に達することができるんじゃないでしょうか。リンは独自の『間』を持っている選手なんですから。