【NBA】ウェスト首位を激走するサンダー、強さの秘密とは?

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by Getty Images,TOBI(sako)

ケビン・デュラント(左)とラッセル・ウェストブルック(右)の爆発力はリーグ屈指ケビン・デュラント(左)とラッセル・ウェストブルック(右)の爆発力はリーグ屈指 レギュラーシーズンも残すところ、あと1ヵ月となりましたが、オクラホマシティ・サンダーが絶好調です。勝率は常に7割以上(39勝12敗/3月31日現在)を保ち、ウェスタン・カンファレンスの首位をキープ。その強さは、カンファレンス決勝まで駒を進めた昨年以上です。

 今シーズンのサンダーを見ていると、『瞬間の爆発力』を感じますね。ワンクォーターで30点以上取ってしまうパワーがあるんです。だからリードされていても、「いつかは逆転できるんじゃないか」と思える雰囲気がある。こんな爆発力を感じるのは、ほかにはマイアミ・ヒートぐらいじゃないでしょうか。

 昨年、プレイオフに進出したときのサンダーは、ケビン・デュラントとラッセル・ウェストブルックの連携が機能していませんでした。一方が良いと、片方がダメという感じで、ずっとチグハグなままファイナルに進めず敗退しました。それが今年、両者は互いを立てたり支えたりして、しっかりと役割ができているんです。それが快進撃を続けている一番の要因と言えるでしょう。

 特に、今年のウェストブルックは飛躍的に成長しましたね。昨年のプレイオフでは、自分がミスを犯すと周りの選手のせいにするという悪いクセを露呈してしまいました。勝負どころで何かやってやろうという気合いが空回りして、周囲を悪い方向に巻き込んでいたんです。ポイントガードというポジションは、自分を失うとチーム全体をダメにしてしまいます。いわゆる『舵取りのいない船』状態ですね。それが、昨年のサンダーの弱さでした。

 しかし、3月29日のロサンゼルス・レイカーズ戦を見ていると、意地でも自分でやってやろうという感じがなくなっていました。さらに、デュラントらチームメイトに得点を委ねるシーンも多かったんです。チームを勝利に導くために、試合の流れを理解しながらプレイしていました。それを見て「成長したなぁ」って感じましたね。昨年のウェストブルックは、ヘッドコーチのバスケット・フィロソフィー(哲学)をあまり理解できていなかったと思うんです。だから、試合中にゲームから引っ込められて、次の試合に使われなかったこともありました。それが今年は一切ないですからね。コーチの哲学を理解して、自分をそこに当てはめる努力をしたのではないでしょうか。

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著者プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

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