ケガの不安を吹き飛ばした錦織圭のパーソナリティ

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

「ケイは、どんなパーソナリティなの?」

 近ごろ、海外の記者からそう問われる機会が急激に増えた。もちろん、錦織圭は英語を流暢に話せるので、彼らも聞きたいことは直接、英語で尋ねることができる。だが、たしかに人間性となると、異国の言葉で、しかも短い会見の中で見出すことは難しい。

ウインブルドンのコートで笑みを浮かべる錦織圭ウインブルドンのコートで笑みを浮かべる錦織圭 そして残念ながら、錦織の柔らかくて温かく、同時にユーモラスな人となりを説明するのは、とても困難な作業である。彼のパーソナリティは言葉の内容そのものではなく、それを言うときの間合いや声色、そして言葉を発する際の照れた笑顔やいたずらっぽい含み笑いにこそ、色濃く映し出されるからだ。

 錦織圭のウインブルドン初戦は、シモーネ・ボレッリ(イタリア/世界ランキング55位)相手に6-3、6-7、6-2、3-6、6-3のフルセットの接戦であった。第5セットの途中には、2週間前のハーレ大会で痛めたふくらはぎに、厚くテーピングを巻き直す場面もあった。試合終盤ではリードしていたためか、無理にボールを追うこともなく、相手の好プレーに拍手を送る姿も見られる。

 苦戦したのは、ケガの影響か?
 初戦から3時間22分戦ったことで、悪化していないのか?

 報道陣の多くはそんな不安を募らせながら、試合後の会見場に足を運んでいた。

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