【F1】角田裕毅の予選5位は偶然の産物じゃない タイムを稼ぐため理詰めで「すべてのコーナーを0.02秒ずつ刻んだ」 (2ページ目)
【今年の角田は明らかに違う】
それを可能にしたのは、これまで以上に細やかなエンジニアとのコミュニケーションだ。ドライビング中も事細かにマシンの状態や感触、意見をフィードバックし、エンジニアからの指示やアドバイスに対しても、そのつどディスカッションをしていく。
決勝を想定したロングランの間も、ただ周回を重ねるだけではなく、ラップごとに走り方を変えてその反応をデータとして収集した。アウトラップも無駄にすることなく、実戦のための鍛錬にあてた。
「去年のレースで『どこがもう少し詰められるところなのか』を振り返った時、たとえばレースのなかでアウトラップがよくなかったらその訓練も兼ねるなど、そういったちょっとしたところも詰めていくようにしました」
コミュニケーションが課題と言い続けてきた角田だが、今年は明らかに違う。これはコミュニケーションそのものの変化というよりも、レースに対するアプローチの成長だ。
とにかく、やれるだけのことはすべてやり尽くす。言葉にするのは簡単だが、実際にそれを実行することは極めて難しい。
予選までの走行は1時間のセッションが3回だけ。それ以外の時間はプロモーション活動や取材対応にも追われつつ、いかにエンジニアたちやファクトリーでサポートするスタッフたちと緊密に改善と準備を進めていくかだ。
チームリーダーとしてチームを引っ張っていかなければいけないという責任感と、結局はそれが自分自身に結果という形で返ってくるという意欲。
今年の角田裕毅は、明らかに今までの彼とは違うドライバーへと成長している。
著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。
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