MotoGPデビュー戦で小椋藍が衝撃の走り 日本人ルーキー5位は2001年の中野真矢以来
2025年のMotoGPは、タイ・ブリラムのチャーンインターナショナルサーキットからスタートした。
2007年以降、開幕戦は中東カタールで始まるのが通例だったが、今年と来年はタイGPからシーズンが始まる。もともとMotoGPの人気が高いお国柄で、今年は週末を通して計22万4634人が観戦に訪れた。
土曜午後に決勝の半分の距離で争うスプリント、そして日曜の決勝レースはともに、今年からドゥカティのファクトリーチームに移籍したマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)が優勝。また、両レースとも2位は弟のアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP/Ducati)、3位はペコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)で、両日ともドゥカティ勢が表彰台を独占した。
小椋藍の走りに世界中のMotoGPファンが驚いた photo by Trackhouse MotoGP Teamこの記事に関連する写真を見る これらのリザルトは、多くのファンにとって想定内の結果だっただろう。ドゥカティ陣営はここ数年いつも圧倒的な強さを見せており、今回も他陣営を当たり前のように凌駕しただけのことなのだから。
だが、日本人選手の小椋藍(Trackhouse MotoGP Team/Aprilia)がスプリントで4位、そして決勝レースで5位に入った事実には、世界中の多くの人々が驚いたに違いない。
昨年のMoto2クラスチャンピオンで、アプリリアのサテライトチームからMotoGPへ昇格した小椋は、この1月に24歳になったばかりの最高峰ルーキーライダーだ。中小排気量時代は落ち着いた安定感のある走りに定評があったが、今年のステップアップに際しては、最初から大きな期待が集まっていたわけではない。
たとえば、2013年にMotoGPへ昇格したM・マルケスは、ずば抜けた才能で初戦から表彰台争いをするのが当然と思われていたし、昨年ステップアップしてきたペドロ・アコスタも、マルケス以来の超弩級ルーキー、と誰もが見なしていた。
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著者プロフィール
西村章 (にしむらあきら)
1964年、兵庫県生まれ。大阪大学卒業後、雑誌編集者を経て、1990年代から二輪ロードレースの取材を始め、2002年、MotoGPへ。主な著書に第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞、第22回ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作『最後の王者MotoGPライダー・青山博一の軌跡』(小学館)、『再起せよ スズキMotoGPの一七五二日』(三栄)、『スポーツウォッシング なぜ〈勇気と感動〉は利用されるのか』 (集英社新書)などがある。