【F1】角田裕毅「わずか22秒でリタイア」に責任はない ただ「不運」で片づけることもできない (3ページ目)
【予選のクラッシュが悔やまれる】
バリアに突っ込んだ角田のマシンは大きなダメージを負ったが、予選後に許されるわずかな作業時間内にメカニックたちが確認作業を行ない、翌朝決勝の5時間前から解禁されるパーツ交換作業時間のなかでマシンの修復を成し遂げた。
予選後のパルクフェルメ(車両保管)下では、時間外作業や仕様変更を行なえばピットレーンスタートとなってしまう。そのため、チームは壊れたパーツの交換とひとつしかない新型フロアの補修作業を行ない、慌ただしい作業時間内で懸命にマシンを修復し、なんとか角田のマシンを11番グリッドへと送り出したのだ。
角田の担当レースエンジニア、エルネスト・デジデリオはこう語る。
「裕毅のマシンに搭載されていた新型フロアは、メキシコシティにはひとつしか持ち込んでいなかった。だけど、それを直すことができたんだ。まるでミラクルだったよ。
このチームにいるコンポジットのエキスパート3人が壊れたフロアをひと目見て、『これくらいお茶の子さいさいだよ」って言ったんだ。私の目からすれば大きく壊れているようにしか見えなかったけど、パーフェクトに修復されていた。そのおかげでピットレーンスタートを免れた」
そうやってグリッドへと向かうレコノサンスラップで、角田は「マシンのフィーリングは昨日とまったく同じだよ、みんな、ありがとう」と言って謝意を伝えた。
それだけに、わずか22秒でレースを終えなければならなかったのはつらかった。角田の責任ではないとみんなが理解してはいても、余計に予選のクラッシュが悔やまれる。
ただの不運で片づけるのではなく、完璧なドライバーとして結果を掴み獲るために自分に何ができたのか。角田はそれをしっかりと見つめ直さなければならない。
その試練を乗り越えた先に、何が待っているのか。勝負はまだ終わってはいない。
著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。
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