角田裕毅、予選7位→決勝10位でも冷静 淡々と仕事をこなしてポイントを持ち帰る姿はベテランの風格 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【RBの最重要課題はハースの前にいること】

 スタートは、ドライバーがクラッチパドルを操作して半クラッチ状態を作り出す蹴り出しの勝負と、そこからクラッチをフルエンゲージしてスロットルを調整しながらさらに加速していく勝負のふたつがある。

 それぞれ、路面とタイヤのグリップレベル、タイヤの最適なグリップを引き出す温め方、ミクロン単位の熱膨張でミートが変わるクラッチの状態、エンジン側のトルクの出し方など、さまざまな要素を絡み合わせた極めて複雑な準備が必要だ。毎回変わるそれらの要素をリアルタイムで読んで、最適なセッティングを見つけ出すエンジニアの腕にかかっている部分が極めて大きい。

 事実、レッドブルでさえ抜群のスタートを安定して決められるようになるまでは、試行錯誤を繰り返して、何度もスタート失敗を経て、ようやく今がある。

 いずれにしても、スタートでルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だけでなくニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)にも先行を許してしまった時点で、RB勢のレースは大きく変わった。

 RBは目の前のレースで少しでも上に行くことではなく、シーズンを通してコンストラクターズランキング6位を争うことになるであろうハースよりも前でフィニッシュすることを最優先に、おそらくレースをしている。入賞のチャンスが数少ないなかで、それを続けていけば、彼らに追い着かれることはないからだ。

 エミリア・ロマーニャGPでも、予選結果に浮かれてメルセデスAMGに戦いを挑んでいれば、彼らには勝てなくてもランス・ストロール(アストンマーティン)の前でフィニッシュできたかもしれない。しかし失敗すれば、ヒュルケンベルグを逆転できないまま入賞のチャンスを献上した可能性もある。

 それを目指すよりも、確実にヒュルケンベルグの前を抑え、ハース勢の前でフィニッシュすることを選んだ。その結果、レースが終わった時に角田とダニエル・リカルドが何位にいるか、入賞圏内にいるかどうかは、結果論でしかない。何位にいようと、ハースの前にいることが最重要というのが、今のRBの戦い方だ。

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