トヨタからF1ドライバーは誕生するのか? 中嶋一貴・TGR-E副会長に本音をズバリ聞く (3ページ目)

  • 熱田 護●取材・文 text by Atsuta Mamoru
  • photo by Atsuta Mamoru

【豊田章男会長の思いがベース】

ーートヨタがF1で走る姿をもう一度、見たいファンも多いはずです。その可能性は今のところどれくらいあるのですか?

 僕はその可能性を答えられる立場ではありませんが、現実的にこれからトヨタがF1のPUをつくることは非常にハードルが高い。実際にF1とWECのPUは求められるものがまったく異なります。

 ただ、トヨタがF1への道を切り開こうとしていることはすごいことだと思います。トヨタのモータースポーツ活動はモリゾウさんがどうしたいのか、という思いがベースになっていますが、トヨタがF1と関わるというのは想像を超えているというか、今までのトヨタだったらあり得ないことです。

ーー宮田選手はガズー・レーシングのカラーリングでF2を走っていますが、たしかに数年前ではあり得ないことです。

 そうですよね。トヨタがF1で活動していないのに、平川選手がマクラーレンのリザーブドライバーになり、宮田選手がF2でレースができることはありがたいと思いますし、ドライバー育成の面でも一個一個積み重ねていかないと、その先にはつながっていきません。僕としては何とか今の育成プロジェクトを形にしていきたいと考えています。

ーートヨタのヨーロッパでのドライバー育成は長期プランで考えているのですか?

 基本的にドライバーには一年一年で結果を出してもらいたいと思っていますが、いきなり1年目で結果を出せなければもう終わりだと言うつもりはありません。ただ、宮田選手だけでなく、その次のドライバーのことも視野に入れて育成をしていかなければなりません。そのあたりも考慮しながら、いろいろと進めていこうと思っています。

川原田 剛/編集協力

【プロフィール】
中嶋一貴 なかじま・かずき 
1985年、愛知県生まれ。トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)副会長。2003年、フォーミュラトヨタでチャンピオンを獲得。その後、トヨタの育成ドライバーとしてステップアップを重ね、2008年からF1に2シーズン参戦。2011年からフォーミュラ・ニッポン(現・スーパーフォーミュラ)に参戦し、2012年と2014年にチャンピオンとなる。2011〜19年にはスーパーGTのGT500クラスに参戦。2015年から世界耐久選手権(WEC)にもレギュラー参戦し、2018−2019シーズンには5勝して日本人初のチャンピオンとなり、ル・マン24時間では2018年から3連覇。2021年限りで現役を引退。

プロフィール

  • 熱田 護

    熱田 護 (あつた・まもる)

    フォトグラファー。1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る