F1は「忖度なし、容赦なし、配慮なし」 元ホンダ技術者・浅木泰昭が語る今季展望
元ホンダ・浅木泰昭 インタビュー前編(全2回)
F1の2024年シーズンがいよいよ開幕。開幕戦のバーレーンGPは、日本時間の3月3日(現地2日)に決勝レースが行なわれる。2023年は、レッドブル・ホンダが22戦中21勝と圧倒したが、その勢力図に変化はあるのだろうか?
今回、F1で最強を誇るホンダのパワーユニット(PU)の開発責任者を務め、現在はDAZNのF1中継でコメンテーターとして活躍する浅木泰昭氏にインタビュー。前編では、今シーズンの見どころをエンジニア目線で語る。
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【メルセデス不振の要因を見極めるシーズン】
ーー2024年シーズンはどんなところに注目していますか?
浅木泰昭(以下同) メルセデスの不振が終わるのか、それとも続いていくのか。その一点に私は注目しています。今年もメルセデスが優勝争いに加わることができなければ、マシンの開発体制に問題があるということがはっきりすると思います。
逆に速いマシンをつくり上げることができれば、2014〜2021年にコンストラクターズタイトル8連覇を達成したメルセデスの開発力は維持されているということです。2022年に導入されたグラウンド・エフェクト・カーのレギュレーションに合わせてマシンを開発したけれども、過去2シーズンはただ単に"外して"しまったということになります。
2024年シーズンは、メルセデスの不振の原因を見極める年になる、という観点でレースを見ていくつもりです。
ーーメルセデスのマシンの出来次第でシーズンの行方が変わってくると予想していますか?
そう思います。レッドブル・ホンダはドライバー、車体、パワーユニット(PU)のすべてが高いレベルでまとまっていますので、今シーズンも強いはずです。でも、昨シーズンのような、22戦21勝というのは異常です。「他のチームが何をやっているんだ」ということですが、とくにメルセデスがダメすぎたというのが私の見方です。
メルセデスがマシンを仕上げてきたら、今シーズンは「レッドブル対メルセデス」の構図になると思います。本来は昨シーズンもそうならなければならなかったのですが、メルセデスが自分たちのPUを供給しているカスタマーのアストンマーティンやマクラーレンが注目を集めました。
ただ、アストンマーティンとマクラーレンがレッドブルと互角の勝負ができたかと言えば、そうではありません。昨シーズン、レッドブル・ホンダが独走した最大の要因はメルセデスが失敗したことだと思っています。
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著者プロフィール
川原田 剛 (かわらだ・つよし)
1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。