F1新時代、2024年の焦点《中編》 角田裕毅4シーズン目で初の表彰台を掴めるか (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 そのため、小松新代表は就任後さっそくチーム内のあらゆる人たちとの対話を始めました。マラネロにも飛んでこれまで直接話すことができなかった空力部門のスタッフ各個人とコミュニケーションを取り、どこに問題があったのかを把握することに努め、チームの方向性をひとつにまとめるように動いています。

 小松さん自身はとにかくレースが好きで、クルマを1000分の1秒でも速く走らせることが最優先、という人です。自分のメンツや権力闘争などはどうでもいいし、そういった阻害要因はチームから排除し、チームの全スタッフが小松さんと同じく「1000分の1秒でも速く走らせる」ということを最優先に動ける組織づくりを進めていくでしょう。

 小松さんは非常に頭がよく、論理的な考え方をする人。自分がやるべきはエンジニアとしての技術的な知見を使った組織づくりであり、専門外のスポンサー活動や他チームとの交渉ごとなどはそれを専門とする人に任せる、という意向もすでに明確にしています。

 そういう意味では、チーム代表になったからといって小松さんの立ち位置が大きく変わるわけではないと思います。むしろ、現場の技術トップというこれまでの立場からチーム全体の技術トップへと権限が拡大したと見るべきで、実質的にはテクニカルディレクターという立場です。

 ここまで述べてきたようなハース特有の環境や、予算の少なさといった難しさもあるとは思います。とはいえ、純粋に勝つことだけを最優先にレースをするというのは、レッドブルやメルセデスAMGなどが成功を収めトップチームに成長するうえで根幹となったフィロソフィであるので、小松新代表の手腕に期待したいところです。

【6】初優勝は生まれるか。新たなスター誕生に期待大

 2022年はカルロス・サインツ(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)が初優勝(サインツ=第10戦イギリスGP、ラッセル=第21戦サンパウロGP)を挙げたものの、2023年は初優勝が生まれず、"初モノ"はオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の初表彰台獲得(第16戦日本GP)のみでした。

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