角田裕毅が怒りのチーム批判「すべてが間違っている」 大成功したリカルドと同じ戦略を採っていれば... (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【安全牌では入賞のチャンスはない】

 実際のところ、角田もリカルドと同じ戦略を採っていれば、リカルドの前でフィニッシュでき、アルボンの前11位でフィニッシュできた可能性が高かった。

 もちろん、残り40周をミディアムで走りきれるかどうかというギャンブルは最下位のリカルドに採らせ、中団グループ上位を争う角田には安全牌の戦略を......というセオリーはわかる。しかしその安全牌では、うまくいっても入賞のチャンスはない。

 今のアルファタウリに必要なのは、13位からひとつでも上のポジションでフィニッシュすることではなく「ポイント」だ。10位以内に入るために13位を捨てる覚悟のギャンブルをためらうべき立場ではない。

「そうですね、(あと1周あればヒュルケンベルグを)抜けたと思います。でも、ポイントを争っているわけではないので、抜けたとしても最下位と変わらないですね」

 角田は吐き捨てるように言いきった。

「可能なかぎりクリーンエアで走り、自分たち本来のペースを生かすこと」というコンセプトを明確に打ち出し、チームの戦略策定を自分の意思に沿うようリードしたこと。なおかつ、レース中もレースの全体像を把握して「抑えるべきところでは抑え、プッシュすべきところではプッシュする」レースに対する解像度の高さ。

 これらは、レッドブルなどトップチームで長年戦ってきたリカルドだからこそだ。1周目のインシデントでも冷静さを失わずそこから挽回してみせたのも、レースの質の高さを物語っている。

 予選はQ1でわずか0.013秒差、決勝もペースや戦略ミスを除いた可能性で言えば、角田とリカルドの差はわずかしかない。少なくとも、見た目のポジションという「結果」ほど大きくはなかった。

 リカルドから学べることは、見た目の差以上に大きい。復帰初戦のレース週末からスムーズにマシンに適応し、予選でマシン性能をフルに引き出してQ2に駒を進め、決勝でも置かれた状況のなかで最大限の結果を掴む──。8カ月ぶりのレースとは思えない、リカルドのレース週末全体に対するアプローチはすばらしかった。

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