角田裕毅「伝統のモナコ」で天国から地獄...完璧な仕事をやってのけたのに、なぜ9位のポジションをあっさり明け渡したのか? (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【なぜ急激にペースが落ちた?】

 雨を待てなかった何台かはピットストップを行ない、角田の後方を走っていたランド・ノリス(マクラーレン)も降水量が少ないと読んで、50周目にハードへ交換。しかしその2周後に雨が降り始め、1周、また1周と雨脚が強まってラップタイムは一気に5秒、14秒、27秒と大きく低下していった。

 2周ステイアウトしたところで、このタイム推移を見たチームからピットインの指示が出され、角田は迷わずインターミディエイト(浅溝)タイヤを選んだ。

 このピットストップのタイミングも、タイヤ選択も見事に「正解」を導き出し、ピットストップを終えたところでマクラーレン勢には16秒もの大差をつけたのだった。

「引っ張っていって、僕の判断でインターミディエイトに交換することを決めました。交換のタイミングはパーフェクトだったと思いますし、チームはすばらしい仕事をしてくれたと思います」

マクラーレンを抑えて前を走る角田裕毅マクラーレンを抑えて前を走る角田裕毅この記事に関連する写真を見る アストンマーティンのフェルナンド・アロンソは同じタイミングでミディアムを選択するミスで、マックス・フェルスタッペンを逆転するチャンスを逃した。ハードに履き替えたノリスも、角田の1周後にはたまらずピットインし、インターミディエイトに履きかえた。

 スタートから雨が降り出すまでタイヤを保たせ、雨がひどくなる55周目よりも前にピットインし、ここでインターミディエイトに交換する──。

 これが今回のモナコGPの「席空き」であり、これができたのは全20台のうち6人だけ。そしてミディアムタイヤでここまで引っ張れたのは、優勝したフェルスタッペンとアルファタウリの2台だけだった。

 つまり、角田とアルファタウリは完璧な仕事をやってのけたことになる。その結果が、9位フィニッシュ確実というレース展開だった。

 だが、雨が降りだしたことで角田のブレーキ温度が下がり、熱が入らなくなった。インターミディエイトに交換する前からこの症状が出始め、同僚のニック・デ・フリースよりもペースの低下が顕著に表われていた。そしてインターミディエイトで走り始めて各車がブレーキの制動距離を探りながら走るなか、そのブレーキングでは角田のブレーキには熱が入らず、制動力を失った。

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