角田裕毅「F1のシートを失ってしまうかもしれない...」今季2戦連続入賞の裏に秘められた「心の焦りとの向き合い方」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【契約獲得に走ってしまった...】

 昨年はシーズン途中から契約更新のことがチラつき始め、なかなか翌年のことが決まらない状況に焦りを感じ、口では「気にしていない」と言いつつも、その焦りがドライビングにも影響を及ぼしてしまっていた。外から見ていても、夏休み前後の粗いドライビングは明らかだった。

「去年は契約が決まらないなかで、それに大きく気を取られてしまった時期がアゼルバイジャンGPから日本GPまでかなり長くありました。その間はF1を楽しむことを忘れてしまっていたんです。

 状況がどうなっているのかわからなくて、ほとんど毎日しっかり眠ることもできていませんでした。そういうストレスや疲れがレースに悪影響を及ぼしていましたし、契約やチームのためにドライブするという意識が強くなりすぎていたと思います。

 あとになって振り返ってみれば、いい走りができていたシーズン序盤戦は『楽しむ』ということができていました。『自分はベストドライバーのひとりだ』という自信があり、それを証明するために走る必要があるのに、契約獲得のために走ってしまっていたんです」

 だからこそ、今年は周辺環境の体制を見直し、F1界に幅広い人脈を持つ宮川マリオ氏にマネージメントを依頼。気心の知れた友人たちに身の回りのことを任せて、自分はレースのことだけに集中できる環境を整えた。経験豊富な宮川氏からのアドバイスや、イタリア系ならではのアルファタウリとの連携など、F1ドライバーとしての仕事に対するスタンスも大きく改善した。

 今年の角田は、開幕前から「すべてのレースで自分の全力を出しきること」を口癖のように目標として言い続けてきた。

 マシンの競争力は、ライバルとの相対的なもの。自分たちが最高のマシンを作り上げたと思ったとしても、ライバルのほうがさらにいい仕事をすれば負けることもある。それは、ドライバーである角田にはどうすることもできない。

 角田にできるのは、自分の力を100%出しきり、自分の力で変えられることすべてを最大限にプラスに変えていくことだけだ。

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