角田裕毅「F1のシートを失ってしまうかもしれない...」今季2戦連続入賞の裏に秘められた「心の焦りとの向き合い方」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【重要なのは順位ではない】

 トレーニングもそう。チームへのフィードバックやコミュニケーションもそう。シミュレーター作業もそう。マーケティング活動やメディア対応もそう。レースを楽しみ、最大限の結果を出すために、自分にやれるかぎりすべてのことをやっている。

 すべてやり尽くしているからこそ、自信がある──。それが2023年の角田裕毅だ。

 バクーからそのままマイアミに移動した角田は、遊びにも出歩かずトレーニングと時差調整に専念してきた。昨年は体調が絶不調のなかでのレースだったが、今年はもうそんな心配もないだろう。

 バクーではこれまで懸念だった最高速の弱点が改善されて、中団最上位をマクラーレン勢と争った。だが、サーキット特性の異なるマイアミでは装着する前後ウイングが異なるため、最高速の不利は再び背負うことになる。

「今回は中速コーナーも高速コーナーもあるのでダウンフォースが必要になってきますから、ただストレートだけに集中するわけにもいきません。どれだけストレートスピードを削らずにダウンフォースレベルを上げられるかが重要となってくるので、バクーとはまた別の話になってくると思います。

 コーナーが速くてもストレートがすごく遅いようなら問題はありますけど、コーナーが速くてストレートが周りよりちょっと遅いくらいなら問題なく戦えると思います。ただそのぶん、コーナーが速くなくちゃいけないですけどね」

 現状ではトップ4チームの牙城は崩れず、彼らが自滅しなければ中団勢は9位・10位のわずか2席の入賞圏を争うことしかできない。

 開幕から4戦続けてその当落線上で争い続けてきた角田だが、9位にしかなれないからモチベーションが感じられないというようなことはない。重要なのは何位なのかという結果ではなく、自分の力を100%発揮することができたかどうかだからだ。

 今週末のマイアミGPでも、それは変わらない。

「今回もいつもと同じで自分のパフォーマンスを100%引き出して、Q3に進んでポイントを獲ることですね」

 チームリーダー角田裕毅は、当たり前のようにそう言いきってマイアミGPに挑む。

プロフィール

  • 米家峰起

    米家峰起 (よねや・みねおき)

    F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。

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