「ノーーーーッ!」角田裕毅の悲痛な叫び...たった1枠の入賞チャンスを逃すも、テクニックを駆使したドライビングは圧巻 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【AT04の実力は9〜10番目】

 10位を死守──そう思われた瞬間、マグヌッセンは角田のスリップストリームから再び、ターン1へ向けて鋭くインへとラインを変えて飛び込んできた。一瞬の隙を突かれた角田はブロックラインを取ろうとしたものの、時すでに遅し。ターン1へブレーキングを遅らせるが、マグヌッセンもそれ以上のレイトブレーキングで奥に突っ込んでくる。

 なんとかコース内にとどまったマグヌッセンは、ターン2でアウトに食い下がろうとする角田を押しのけて前に出た。

「ノーーーーッ!」

 無線に乗って届いた角田の悲痛な叫びは、ポジションを失った悔しさと、自分への怒りが入り混じって響いた。

 マシンを降りた角田は、ガックリと肩を落としながらもマグヌッセンの健闘を讃え、テレビカメラに向けては悔しさをにじませながらもチームを鼓舞するように前を向いた。

「最後の最後でポイントに手が届かなかったのには、とてもガッカリしています。でも、全力を出しきりましたし、マシンの性能を最大限に引き出すべく努力して、その結果としてポイント獲得ができそうなところで戦えたというのはポジティブな要素だと思います。

 ポイント獲得に必要なのは、あと0.2〜3秒なんです。(開幕戦の苦境から)ここまでのペースを発揮できていることには、とても満足しています」

 9番目か10番目のマシンでしかなかったAT04でも、チーム全員が完璧な仕事をすれば、ここまで戦える。クルマが改善できれば、もっと上が狙える。

 自分自身も、チーム全体も、間違いなく進化している。とりわけ、角田自身のF1ドライバーとしてのドライビング、そして立ち居振る舞いの成長は著しく、それは誰の目にも明らかだった。

 その手応えがあったからこそ、角田は前を向いた。

「こういう戦いを続けていれば、いつか今回よりも大きなチャンスが巡ってくることもあると思うので。それが巡って来た時には最大限に生かせるように、常にマシンの性能を最大限に引き出し続けて、チャンスを待つしかないと思っています」

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