「ノーーーーッ!」角田裕毅の悲痛な叫び...たった1枠の入賞チャンスを逃すも、テクニックを駆使したドライビングは圧巻 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【フロントタイヤを滑らせて...】

 18周目にセーフティカー導入となり、ここでピットイン。スロー走行中にピットストップを済ませることで約10秒を稼ぎ、気づけばピットインを済ませていたハース勢だけでなくアルピーヌ勢まで喰って8位までポジションを上げることに成功した。

 もちろんこれはセーフティカー導入という運も味方したが、その運を掴むことができたのは、角田がステディな走りでミディアムタイヤを労り、好ペースを維持して走り続けたからだ。

 運を掴むのにも実力が必要な世界──それがF1だ。

 リスタートから角田は果敢に攻め、アルピーヌ勢をなんとか抑え込んだ。しかし、本来のペースが格段に違う彼らを抑え続けることは難しく、2台に抜かれて10位へ。続くハース勢も純粋なペースでは敵わない相手だが、テクニックを駆使してコース上で抑え続けた。

 なかなか熱が入らず長いストレートで冷えてしまうフロントタイヤの熱を維持するために、ドライビングを変えて「フロントを滑らせて摩擦で熱を入れる」という手段まで使い、なんとかグリップを少しでも高めてコーナーでタイムを稼ぐ。ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)のタイヤが先に音を上げて後退し、勝負はケビン・マグヌッセン(ハース)との一騎打ちになった。

 たった1席──ランス・ストロール(アストンマーティン)のリタイアによって空いた最後の入賞圏を巡る死闘。

 この入賞1ポイントが、中団グループにとってどれだけ大切な1ポイントかは、誰もがイヤと言うほど知っている。だから、その争いにも熱が入る。何度も仕掛けるマグヌッセンに対し、角田は巧みにポジションを守り続けた。

 レースが残り5周となった45周目の最終コーナーで、マグヌッセンは角田のインに飛び込んだ。

 角田はそこではあえて抵抗はせず、最終コーナーを立ち上がった先でDRS(※)を獲得し、メインストレートでその加速を使ってマグヌッセンを抜き返す。これでなんとか10位を取り戻した。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

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