「フェルスタッペンはファンサービスしない」「ラッセルは腹黒い」。F1カメラマン2人が目撃した一流ドライバーたちの意外な一面 (3ページ目)
【ラッセルはハミルトンをやっつける】
ーーコンストラクターズ選手権の連覇が8でストップしたメルセデスの戦いぶりはどう見ましたか?
熱田 ジョージ・ラッセルは正直、ちょっと期待外れでした。37歳のハミルトンはスピードの面では確実に落ちています。引退間近のキミ・ライコネンもそうでしたが、年齢とともにスピードが衰えてくると、戦い方がちょっとずつ変化してきます。
ハミルトンもマクラーレン時代(2007〜2012年)に、当時のチームメイトだったフェルナンド・アロンソをやっつけたような圧倒的な速さは見られなくなっています。逆にタイヤをうまく使って、300キロのレースをどうやって組み立てるかという戦い方になっています。
確実に終わりが近づきつつあるハミルトンに対して、ラッセルは予選での一発の速さではもっと大差をつけるような天才なのかなと思っていました。最終的にハミルトンよりは多くのポイントも稼いだこと(ラッセル275点、ハミルトン240点)はすごいですが、そこまでのものではなかったかな。
この記事に関連する写真を見る桜井 ラッセルは、レーサーとして優しすぎるんじゃないかな。イギリスGPではスタート直後、ラッセルと周冠宇(アルファロメオ)が接触して、周のマシンがひっくり返った場面がありました。ラッセルはすぐに自分のマシンを止めて助けにいきましたが、あの時にラッセルのマシンは左リアホイールを壊れていただけでした。
あのままピットに入って修理すれば、再スタートがきれました。でも助けに行ったことで、結局、ラッセルはリタイアに終わってしまった。おそらくハミルトンやフェルスタッペンはレースに出られる可能性が少しでもあるのであれば、絶対に助けには行かないと思います。ラッセルは速いですが、優しすぎます。
熱田 それについては、僕はちょっと違うと思います。意外とラッセルは腹黒いヤツですよ(笑)。2021年のエミリア・ロマーニャGPでバルテリ・ボッタス(当時メルセデス、現アルファロメオ)とクラッシュした時、ボッタスのところに向かっていって文句を言っていました。
あれは明らかにラッセルのミスだと思いますが、このままでいけば自分が悪くなると察知して、アピールしていたと思います。そういうしたたかなところや野心を隠し持っています。
2022年の前半はマシンが不調だったこともあったので、ハミルトンを倒すチャンスを虎視眈々とうかがっていた。2023年はガンガン行って、ハミルトンをやっつける最初のシーズンになると僕は予想しています。
対談 後編<「角田裕毅はすごく変わった」「岩佐歩夢は佐藤琢磨みたい」。F1カメラマンふたりが語る日本人ドライバーへの期待>につづく
【プロフィール】
熱田 護 あつた・まもる
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。2022年シーズン終了時点で取材557戦の、日本を代表するF1カメラマン。2023年1月28日まで写真展『0.2sec』が「M16 Gallery」(東京都江東区冬木22-32 森芳ビル1階)で開催中。1月7日、14日、22日にはトークイベントも実施。
桜井淳雄 さくらい・あつお
1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。YouTubeでは『ヒゲおじ』としてチャンネルを開設し、GPウィークは『ヒゲおじ F1日記』を配信中。鈴鹿サーキット公式HP内の特設ページ『写真で振り返る2022年シーズン』で作品を掲載。
【著者プロフィール】
川原田 剛 かわらだ・つよし
フリーライター。1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』を始め、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手掛けている。
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