F1の安全神話は崩れた。時速200km/hで「あわや大惨事」だった日本GPの教訓を生かすことができるか (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

命を失わないシステムの確立を

 ガスリーのドライビングが100パーセント完璧だったとは言わない。しかし、彼のドライビングは現行のルールで「安全」と認められた範囲内だった。ジュール・ビアンキの事故(2014年日本GP)をきっかけに導入されたVSCと「デルタラップタイム」の仕組みは、それに従って走っていればドライバーとマーシャルの安全が確保されるはずのシステムだったからだ。

 しかし、その安全神話が崩れた。

 安全だったはずの目の前に突然重機が現われたのだから、ガスリーのショックは察するに余りある。安全が確保されていると思って撤去作業を開始したマーシャルたちも、突然200km/h近い速度(ガスリーは赤旗提示を受けて187km/hまで減速している)でマシンが現われたのだから、どれだけ身の危険を感じたかは言うまでもない。

 ドライバーもレースコントロールも、人間誰しもミスは犯しうる。問題は、そのミスが起きた時に誰かの命が失われるようなことがないシステムを確立することだ。FIAもドライバーたちもそのことを理解し、すでにこのアメリカGPから対策を採るべく前へと動き出している。

 F1ブームに沸くアメリカで超満員のサーキットが興奮に包まれるよう、F1は前へと進んでいるのだ。

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