「俺の言うことを聞け!」「俺にゴマするな!」。闘将・星野一義監督の育てた強いカルソニックブルーが帰ってきた! (3ページ目)
守る選択肢は1%もなかった
第5戦の予選では、うまく歯車が噛み合わず15番手に沈んでしまった。もちろん予選後、星野監督から檄が飛んだことは想像に難くない。だが、それを起爆剤にしたドライバーとチームは、翌日の決勝で完璧な仕事をこなした。
レース序盤、まずはバケットがポジションを取り返すべく激走を見せる。ナンバー37のKeePer TOM'S GR Supraとのバトル時に130Rでコースオフを喫するが、バケットはアクセルを緩めることなくコースに復帰し、ポジションアップに努めた。
また、バケットはチェンジ後の展開を優位に進めるために磨耗が進むタイヤで粘り、1回目のピットインまでライバルよりも多い33周を走破。これも、レース後半に上位進出を果たす大きな伏線となった。
さらに、星野監督に育てられたチームスタッフも見せ場を作る。レース後半の49周目にGT300のマシンがクラッシュすると、チームはセーフティカーが導入されることを見越して、予定を早めて2回目のピットストップを決断した。
その決定からマシンがピットに停車するまで、わずか数十秒。しかし、事前に準備して構えていたメカニックたちの完璧な作業によってマシンはコースへ送り出され、一気に3番手に浮上できた。
そして今回、一番の分岐点となったのが、レース終盤での出来事だ。
ナンバー23のMOTUL AUTECH Zを追い抜こうとした際、12号車は幅寄せを受けてコース外まで追いやられた。幸いガードレールにクラッシュすることはなかったが、マシン前部の吸気口に芝生が詰まってしまったのだ。
このまま走り続ければ、エンジンの故障をはじめ、マシンに致命的なダメージを負う可能性もあった。だが、マシンを操る平峰をはじめ、チーム全員の頭の中に「トラブル防止のため、守りの走りをする」という選択肢は1パーセントもなかったという。
「コースオフをして少し問題は抱えましたけど、頭のうしろのほうで『お前、なんとかしろよ!』と監督から言われている気がして......。『絶対、もう一度追いついてやる!』という気持ちで、すべてを出しきろうと思いました」(平峰)
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