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逃げるフェルスタッペン、追うサインツ。攻めから一転、守りとなった好バトルは0.993秒差で決着した (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

攻めから守りへ状況は一転

 しかし49周目、ブレーキングを遅らせすぎた角田裕毅(アルファタウリ)がピット出口のバンプに乗ってクラッシュを喫し、マシン回収のためセーフティカー導入となった。VSCではなくセーフティカーというのが、フェルスタッペンにとっては悪夢だった。

「セーフティカー出動は僕らにとって、かなり歓迎せざる出来事だった。あれによって、カルロスが僕よりフレッシュなタイヤですぐ後ろに来てしまったんだからね。それに彼のペースのほうが少し速いことはわかっていたから、ポジションを守りきるのは簡単なことではないこともわかっていた」

 本来ならサインツはピットインせず、最後にタイヤがタレたところでフェルスタッペンが追い着くはずだった。もしVSCなら、仮にサインツがピットインしたとしても数秒後方に下がることになるため、そのリスクを冒すことはなかっただろう。

 しかしセーフティカーなら、サインツはピットインしてフェルスタッペンより5周フレッシュなタイヤですぐ背後について、レース再開に臨むことになる。ステイアウトすれば23周もフレッシュなタイヤのフェルスタッペンが背後にやって来て、すぐに追い抜かれてしまうことは明らかだったからだ。

 フェルスタッペンにとっては、攻めのレースから一転して守りのレースへ。一切のミスも許されない緊迫の残り16周が始まった。

「最後の15〜16周は全開だったし、限界までプッシュしたよ。もちろん。ミスは一切許されないこともわかっていた。僕は守りのレースより攻めのレースのほうがよかったけど、幸いなことにうまくいったね。

 いいバトルだった。タイヤをセーブするレースよりも、F1マシンの限界までプッシュするレースのほうが楽しいに決まっているよ」

 一方のサインツも、自身の初優勝を掴み獲るべく、最大限のプッシュを見せた。

「すごくタフで緊迫したバトルだった。僕のほうが少しだけ速いことはわかっていたし、僕のほうが5〜6周フレッシュなタイヤを履いていたけど、オーバーテイクをするにはその0.2〜0.3秒のアドバンテージでは十分ではなかったんだ。

 すべてを出し切って、縁石も使い壁もギリギリまで寄せて、最大限のリスクを背負って攻めた。乱流を受けて何度かヒヤリとする瞬間もあったけど、インに飛び込むチャンスは巡ってこなかったよ」

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