F1参戦3年目、マクラーレン・ホンダはバラバラ。アロンソに「こんなことなら、去年のエンジンでよかった」と言われ... (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【ホンダに愛想を尽かしてロビー活動】

 走らないマシンに怒りを爆発させたアロンソは「エンジントラブルだ! BOXする!」と自らピットに戻ってマシンを降りた。だが、物理的なトラブルはなく、パワーユニットの性能自体が"問題"と言いたかったのだろう。

「今日の僕らがストレートで抱えていた不利は驚くべきものだった。ストレートの立ち上がりでミラーを見て、後ろのクルマが300メートルとか400メートル後方にいたから、彼の存在は気にすることなくステアリングのボタン操作変更をしていた。

 すると、気づいたらブレーキング時には彼がすぐとなりにいたんだ。あれにはビックリしたよ。ストレート1本で300メートルもギャップを縮められてしまうんだよ? フラストレーションを感じるよ」(アロンソ)

 実際には300メートルもの差が縮まっていたわけではないが、コクピットにいてスロットルを全開で踏むしかできることがないストレートで抱えている差の大きさに、彼がフラストレーションをつのらせていることは明らかだった。

 マクラーレンは開幕前テストの時点でホンダに愛想を尽かし、メルセデスAMG製パワーユニットにスイッチできないかを模索していた。ロビー活動をするのみならず、MCL32にメルセデスAMG製パワーユニットを搭載するための設計図まで作成していたほどだった。

 アロンソはF1へのモチベーションを失って「世界三大レース制覇」という目標を掲げ、インディ500への挑戦に熱意を燃やすようになった。実際に、このバーレーンGPでこの年のインディ500参戦を表明している。

 マクラーレン・ホンダはもう、バラバラだった。

 ホンダはさらなる飛躍のために挑戦し、失敗した。そこから這い上がろうと必死にもがいたが、マクラーレンの雇われ首脳たちにそれを待つだけの余裕はなかった。彼らは自分たちの保身のために、この3年間の低迷の理由をすべてホンダに押しつけて、関係解消へと邁進していった。

(第5回につづく)

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