中野信治が角田裕毅のF1初年を分析。初戦で生まれた「いけるかもの油断」、最終戦までの成長

  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄、村上庄吾●写真 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

中野信治インタビュー後編「角田裕毅の可能性」

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7年ぶりに誕生した日本人F1ドライバー、角田裕毅選手のデビューシーズンは入賞7回、ドライバーズランキング14位という結果に終わった。最終戦のアブダビGPはアルファタウリのチームメイトであるピエール・ガスリーを予選・決勝ともに上回り、自己最高の4位という好結果で締めくくったものの、それ以外のレースではガスリーの後塵を拝し、課題も多いシーズンだった。元F1ドライバーの中野信治氏は角田選手のデビューシーズンをどのように評価したのか。2022年への期待とともに語ってもらった。

7年ぶりの日本人ドライバーとして2021年にF1デビューした角田裕毅選手 photo by Sakurai Atsuo7年ぶりの日本人ドライバーとして2021年にF1デビューした角田裕毅選手 photo by Sakurai Atsuoこの記事に関連する写真を見る

【「いけるかも」の油断】

中野信治 角田選手のデビューシーズンを振り返ると、開幕戦の予選ですごくいい走りをし、決勝でも9位でフィニッシュ。デビュー戦でみごとに入賞を飾りました。それで周囲がすごく期待し、本人にとってもこのままいけるかもしれないという油断が生まれたと思います。

 その油断がミスを誘発して、自分で自分を追い込んでいき、シーズン前半は多少走りも乱れただろうし、それまで思いっきりトライできていた部分ができなくなって、すごく苦労しているように見えました。

 シーズンを折り返してからもなかなか結果が出ていませんでしたが、我慢強く走行を重ねていました。チームメイトのピエール・ガスリーに順位で負けようが、とにかく確実に毎セッションを走りきっていました。この我慢の時期が角田選手にとってすごく大事だったと思います。

 毎セッションをしっかりと走ることで、レースウィークを通しての時間の使い方、予選や決勝の戦い方といった、いわゆるグランプリの基本を学ぶことができました。それが徐々に実を結んでいき、シーズン終盤の予選では安定してトップ10に入り、最終戦では自己最高の4位入賞を果たし、ファンの期待に応えてくれました。

 開幕前から申し上げているとおり、僕は角田選手の速さに何の疑いも持っていません。彼のドライビングのデータを見ていても、ガスリーにまったく負けてないし、自分に合ったクルマに乗ることができれば、角田選手のほうが速く走れると思っています。ガスリーを上回る成績をもっと早く残してくれると期待していたのですが、前半戦は角田選手が自分自身のメンタルをうまくコントロールすることができていませんでした。

角田裕毅選手のF1初年を振り返った中野信治氏 photo by Murakami Shogo角田裕毅選手のF1初年を振り返った中野信治氏 photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る

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