角田裕毅の苦難に満ちたF1ルーキーイヤー。自信をへし折られ、遠回りし、ついに新しい世界が見えた (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【角田にはまだ伸びしろがある】

 その後、ランド・ノリス(マクラーレン)がパンクを喫したことで脱落し、53周目のセーフティカー導入ではボッタスの14秒以内にとどまっていたことで、自分たちだけがピットインしてソフトタイヤに交換できる幸運を得た。これは、フェルスタッペン対ハミルトンとまったく同じ構図だった。

 そして最終ラップには、ターン6で3位のカルロス・サインツ(フェラーリ)と争っていたボッタスのインに飛び込んでやや強引ながらもパス、3位さえも視野に入れて加速した。ただ、シフトパドルに触れてしまったのか一瞬5速から4速にシフトダウンしてしまう不運もあり、その後はガスリーを抑えるのが精一杯だった。

 それでも角田にとっては、レース週末を通して自信を持ってドライビングでき、メルセデスAMGやフェラーリ、マクラーレンを相手に互角の走りをし、4位でフィニッシュしたことが何よりも大きな収穫になった。アルファタウリのマシンと同等かそれ以上の実力を持つマシンたちと戦うことでしか見えてこない世界、自分の優れている点、自分にまだ足りない点が見えてくるからだ。

「今シーズンでベストな結果を残せたこともそうですが、特に今週は自信を取り戻すことができました。今シーズンを通してずっと、僕の最大の課題は自信でした。ずっと自信を持ってドライブすることができませんでした。自信を確立してドライビングすること、そしてマシンへの理解を深めることは本当に難しかったんです。

 でも今回は初めて、バーレーンの時以上の自信を持って走ることができたのです。最終戦でようやくここまで辿り着けたのはちょっと遅すぎたかもしれませんが、こうしてシーズンを終えることができたのは、来年に向けてもよかったと思います」

 最終戦でようやくガスリーに勝った。ただ、これは1勝21敗なのではなく、角田がガスリーと同等のレベルにまで成長してきたという意味だ。そして角田には、まだまだ伸びしろがある。

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