中野信治がF1開幕前のテストで興味深く見た「上位2チームの方向性」 (4ページ目)

  • 川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄(マシン)、村上庄吾(人物)●撮影 photo by Sakurai Atsuo, Murakami Shogo

 3シーズンぶりにF1復帰を果たすフェルナンド・アロンソがステアリングを握るアルピーヌ(前ルノー)。2度の世界チャンピオンに輝いたアロンソには期待していますが、テストでのアルピーヌのパフォーマンスに驚きはありませんでした。

 アルピーヌの2020年の成績(コンストラクターズランキング5位)は決して悪くはないですが、中団グループから抜け出してトップに迫るかといえば、そういう勢いは感じられません。マシンの特性があったコースで年に数回は速さを見せるかもしれませんが、常に表彰台を争うというポジションに躍進するような兆しは見えませんでした。

 マクラーレン、アストンマーティン、アルファタウリ、フェラーリ......、今シーズンも中団グループのバトルは熾烈(しれつ)を極めそうですが、そこからウイリアムズとハースはちょっと離されているような気がします。ウイリアムズは去年よりはよくなっていると思いますが、まだ入賞を争うほどの力は感じられない。ハースはマシン開発がストップしているような状況で、新人のミック・シューマッハは苦戦を強いられそうです。

 昨年はメルセデスとレッドブルがトップグループを形成し、その後ろでマクラーレンやレーシングポイントなどのセカンドグループが激しいバトルを繰り広げましたが、今年もその構図は基本的には変わらないと思います。ただトップ集団とセカンドグループの差はぎゅっと凝縮されてくるのではないかと予想しています。

 ファン目線で言えば、メルセデスがテストのときとあまり変わらない状況で開幕を迎えてくれると、より面白い展開になると思っています。開幕戦の予選Q3がどんな結果になるのか。僕自身もすごくワクワクしています。

(中編につづく)

【プロフィール】  
中野信治 なかの・しんじ 
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのCARTおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として若手ドライバーの育成を行なっている。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や2021年からスタートしたF1の新番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当している。

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