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ミルがMotoGP王者に。猛追を実現したスズキのマシン特性とは (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 潮目が変わったのは、第5戦オーストリアGPからだ。このレースでミルは2位に入り、MotoGP2年目にして初めての表彰台を獲得した。2週連続のスティリアGPでは、レース序盤からトップを快走したが、他選手のマシンにアクシデントが発生してコースサイドで炎上したため、赤旗中断。再開後は中断前の勢いを発揮できずに4位で終え、初優勝は残念ながら幻で終わった。だが、2週連続で高いパフォーマンスを発揮したことにより、ミルはにわかに注目を集める存在になった。

 1週間のインターバルを置いて、次のサンマリノGP、エミリアロマーニャGP、カタルーニャGPの3連戦では3位、2位、2位、と連続表彰台を獲得。カタルーニャGP終了段階でランキング2位へ浮上し、チャンピオン候補の一角に名乗りを上げた。ミル自身も、チャンピオンの可能性を意識したのはこのレースの時期だったという。

「スティリアGPは強さを発揮して優勝争いをできた初めてのレースだったけど、(赤旗中断で)勝てなかった。その後のミザノ(サンマリノGPとエミリアロマーニャGP)とバルセロナ(GP)のあたりで、『スティリアの走りはまぐれじゃない、この速さをずっと発揮できるかも......』と思った」

 そしておそらくこの段階で、レースを長く観戦してきた見巧者なら気づいたかもしれない。このミルの強さは、彼がMoto3クラスでチャンピオンを獲得した17年シーズンに見せた勝負の巧さに似ているな、ということに。

 ミルに初めてインタビューをしたのは、実はこの17年シーズンの春先だったのだが、その当時の彼はまだ19歳にもかかわらず、冷静な分析能力としぶとい戦い方は、〈老練〉と評してもいいような巧さを感じさせた。案の定、その年の秋には10勝を挙げてタイトルを獲得するのだが、そのときに見せていた能力の萌芽が、MotoGP2年目の今年に本格的な開花を始めた、ということなのだろう。

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