日産GT-R、最後尾から奇跡の大逆転。優勝できた3つの要因とは

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 新型コロナウイルスの感染拡大によって7月中旬に開幕しながら、わずか3カ月でシーズンの4分の3を終えようとしている2020年のスーパーGT。シリーズ第6戦は10月24日・25日に三重県の鈴鹿サーキットで開催された。

 コロナ禍の影響で、鈴鹿サーキットではF1日本GPをはじめ、国際格式のレースが軒並み中止となっている。そんな状況で行なわれた、今シーズン初めてとなる有観客での大規模レースの開催。秋晴れとなった鈴鹿サーキットには、1万9000人のモーターレースファンが集まった。

奇跡の大逆転で鈴鹿を制した日産GT-R奇跡の大逆転で鈴鹿を制した日産GT-R 鈴鹿に詰めかけた大勢のファンの視線を一身に集めたのは、15番手がスタートからMOTUL AUTECH GT-R(ナンバー23)だった。

 土曜に行なわれた公式予選。松田次生がドライブを担当した23号車は、Q1でのタイムアタック中にクラッシュを喫してしまう。結果、決勝はまさかの最後尾からのスタートとなってしまった。

 しかしいざレースが始まると、誰も予想しなかった展開が待ち構えていた。まずは前半を担当したロニー・クインタレッリがスタートから積極的にポジションを上げて、7周目には12番手まで浮上。その後、前を行く11台がピットストップを行なっている間に、23号車はトップを走ることになった。

 すると21周目、GT300クラスの埼玉トヨペットGB GR Supra GT(ナンバー52)がクラッシュ。安全確保のためにセーフティカー(SC)が出た。SCが出ている間、コース上は全区間で追い越し禁止となり、全車スローダウンを余儀なくされる。また、SC導入中はドライバー交代を伴うピット作業もできなくなる。

 ちょうどこの時、23号車はピットストップを行なっている最中だった。各車がスローダウンとなっている間、23号車はSCが導入される直前にドライバー交代を行ない、すでにピット作業を終えているなかで先頭を走っていたカルソニックIMPUL GT-R(ナンバー12)の前でピットアウトに成功する。

 過去のスーパーGTを振り返っても、滅多にない大逆転劇。まさかの出来事に、観客席のみならずメディアセンターにいた記者たちも状況をすぐに把握できず、混乱していた。

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