もつれる今季のMotoGP。「コロナ失業」を味わった苦労人が予想外の優勝 (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 9戦で7名の優勝者というこの事実は、「クレイジー」と言われる今季の予測のつかない戦況をよく表している。ペトルッチの場合は、今シーズンの奇妙さを、こんなふうにも表現する。

「今年はまったくクレイジーな年で、シーズンが始まる前に来年のシートがなくなると判明したので、『誰も僕を信じてくれていないんだな』という気がした」

 新型コロナの蔓延による大幅なスケジュール変更で、MotoGPクラスのレースが始まったのは7月中旬からだった。そのはるか前に、ペトルッチはドゥカティファクトリーチームから来季のシートがないことを通達されていた。ライダーにしてみれば、これからレースで自分の実力を発揮して能力をアピールしようという前に解雇が明らかになったわけで、そのような出来事が自分自身に対する自信によい影響を及ぼさないことは想像に難くない。ある意味ではこれは「コロナ失業」といえなくもない。

「でも、行き場所(KTMサテライトチーム)も見つかったし、僕を信じてくれている人たちがいることもわかった。いつも頑張ってくれるチームには、もちろん感謝をしている。また、母国で僕を支えてくれる人々にも感謝したい。自分は勝てるんだ、ということを証明できてよかった」

 一方、ポールポジションからスタートしたものの、序盤で大きく順位を下げてしまったランキング首位のクアルタラロは、9位で7ポイントを獲得。ランキング2番手のミルは11位で5ポイントを得たため、ふたりの間は2ポイントが広がったのみで、得点状況の趨勢に大きな変化はない。

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