トヨタが意地の逆転劇。「スープラ」の名を汚すわけにはいかない (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 富士スピードウェイはトヨタのお膝元。それだけに第5戦は負けられないレースではあった。しかしそれ以上に、今季の彼らには是が非とも勝たねばならない理由がある。

 今季からGT500クラスに導入された新規定に伴い、トヨタは新型車両を導入した。2006年以降はレクサスブランドの車両で戦ってきたが、トヨタがベースとして新しく製作した車両は「GRスープラ」。

 日本のレース界において「スープラ」は輝かしい成績を残してきた。前身の全日本GT選手権を含めて4度のシリーズチャンピオンを獲得したほか、各地のサーキットで数多くの名バトルを繰り広げ、多くのモータースポーツファンから愛された車両のひとつである。

 そのスープラが、長年の時を経てGT500クラスで復活。今季の開幕前テストを取材して印象に残ったのは、トヨタ陣営のドライバーたちのコメントだった。

「狙うはデビューウィン」「デビューイヤーでチャンピオンを獲得」。誰に聞いても、勝利を強く意識している様子だった。伝統あるスープラが復活する初年度で勝ちたい、いや、勝たなければならない......。陣営全体がそういった雰囲気に包まれていた。

 これまで3度のGT500王者に輝き、『ミスターGT』の異名を持つ39号車の脇阪寿一監督は、今シーズン開幕前にGRスープラの復活についてこのように語っていた。

「僕がエッソ(2002年にタイトルを獲得したエッソ・ウルトラフロー・スープラ)に乗っていた時は『スープラ』という名前の意味合いや重みは、そこまでわかっていませんでした。自分が戦う道具、スピードを示す道具がスープラだった......というだけの認識でした。

 今年12名のドライバーのなかで誰がデビューイヤーのチャンピオンを獲れるのかわかりませんけど、(年間王者になれたら)後々になって『スープラってすごいな』って気持ちがついてくることでしょう」

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