ホンダF1今季2勝目。ガスリーが表彰台の中央で亡き友に捧げる (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

表彰台に腰掛けて思いにふけるガスリー表彰台に腰掛けて思いにふけるガスリー「今はまったく現実味がないし、言葉が出てこないよ。赤旗のチャンスを最大限に生かしたけど、クルマはとても速かった。こんなにパワーセンシティブなサーキットで勝てたんだから、僕にF1デビューと初表彰台、そして初優勝のチャンスまでくれたチームとホンダにとても感謝している。

 表彰台でさえすごかったのに、優勝だなんて本当に信じられない。残り数周でこのチャンスを逃したら、ものすごく後悔するだろうということもわかっていた。だから、全力を出し切って走ったんだ」

 ベルギーGPで最後まであきらめずに走ったのが「盟友ユベールに誇れるレースをしたい」という思いからであったのと同じように、モンツァでも彼の存在がガスリーの背中を押してくれていたのだろう。

 トップでチェッカードフラッグを受け、マシンを降りたガスリーのもとにルクレールが祝福に訪れた。彼もまたユベールとともに育ってきたドライバーであり、昨年のベルギーGPでは決勝前に「このレースはアントワーヌのために君が勝たなきゃダメだ」とガスリーが弔いを託した相手だ。

 あの時はトロロッソへと降格を言い渡され、フェラーリに乗るルクレールにその思いを託すことしかできなかった。

 だが、今日は自分が勝ち、モンツァの表彰台の中央に立った。

「表彰台から離れたくなかったんだ。ああいう瞬間を楽しむことができる機会は、そう多くあるものではないからね。だからそこに腰掛けて、少しひとりで自分の心の中に去来した感情を噛み締めながら、その瞬間をもう少し楽しんでいたかったんだ」

 シャンパンファイトを終えて表彰台に腰掛け、ただひとりその場に残ったガスリーに去来した思いがどんなものだったのか。それはガスリー自身にしかわからない。

 しかし、きっとそこには、アントワーヌ・ユベールが一緒にいたはずだ。

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