ホンダF1今季2勝目。ガスリーが表彰台の中央で亡き友に捧げる (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 それは、F1直下のGP2(現FIA F2)でいつも彼がやっていたのと同じレースだ。

「残り28周だったと思うけど、ターン1でランス(・ストロール)を抜くことができた。これが大きな助けになったんだ。それでルイス(・ハミルトン)がピットインしてからは自分自身のレースになった。

 レースをリードして、コーナーごとに自分の走りに集中して走るという、GP2時代のことを思い出していたよ。そしてスタートからプッシュして後続を引き離して、トウを使わせないようにしながら、前に誰もいないからコーナーでタイムを稼ぐ走り方をしなければならないこともわかっていた」

 前に誰もいないということは、スリップストリームは使えない。ということは、コーナーでタイムを稼ぐしかない。その分だけタイヤの性能低下が早く進む。2位のカルロス・サインツJr(マクラーレン)はどんどん背後に迫ってくる。

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 それでもガスリーは最後まで冷静で、マシンのスライドを抑えるためのチームからのセッティング変更の指示も的確だった。

「最後の5周はタイヤもタレていたから、かなり厳しかったよ。僕はコーナーでタイヤを使ってタイムを稼いでいたから、その分だけデグラデーション(性能低下)も進んでしまった。だけど、それが僕にとって唯一の方法だから仕方がない。どのコーナーでもクルマが滑っていたし、カルロス(・サインツJr)が徐々に追いついてくるのも見えていた。

 近づけば近づくほど、スリップストリームが効いてさらに接近してくるのもわかっていた。ミラーに写る彼の姿がどんどん大きくなってきたけど、1.5秒差になってからはエネルギーをセーブしておいて、彼が仕掛けて来たらそれを使ってディフェンスしようと備えていたんだ。最終ラップにそれを使い果たしたけど、なんとか彼を抑え切ることができてよかった」

 今の中団グループは極めて僅差だ。日頃はその集団の中に埋もれているマシンとドライバーでも、ひとたび前に出ればそのポジションをキープする力はある。攻めるべきところを攻め、なおかつミスを犯さなければ。ガスリーがやってのけたのは、まさにそういうことだ。

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