震災直後の日本にエール。MotoGP王者のストーナーは誠実であり続けた (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 11年は、シーズンが進むにつれ、「日本に行きたくない」というライダーたちの声が大きくなっていった。ツインリンクもてぎへ行くと、「原子力発電所事故の影響で自分たちも被曝してしまうのではないか」という懸念がその理由だった。

 今から考えれば、過剰反応というほかない。だが、日本より情報量の乏しい当時の欧州では、煽情(せんじょう)的で怪しげな風説も少なからず流布していた。

「ガンバレ」と応援し、〈With you Japan〉とマシンにステッカーを貼って走行しながらも、もう一方では科学的根拠の乏しい情報に左右され、「日本へ行くのが恐い」と言う。

「がんばれ日本!」と記されたステッカーをマシンに貼ってレースを走るストーナー「がんばれ日本!」と記されたステッカーをマシンに貼ってレースを走るストーナー そんな彼らに対し、「たゆまぬ応援と支援には日頃からとても感謝をしています。しかし、あなた方の言動は矛盾しているのではないですか」。そう問いかけてみたことがある。

 社交辞令的な返答に終始したり、あるいは話を逸らしてみたり、もしくは「僕も同じ意見」と面倒な意思表示を避ける選手もいた中で、ストーナーは視線を逸らさずに真っ正面からこちらを見て自らの思うところを述べた。

「日本を支援したい気持ちは、これまで同様に何も変わることがない。しかし、自分たちが今、日本へ行けばかえって迷惑になるという場合だってあるかもしれない。それに、たとえ僕たちが行かないとしても、日本の復興を応援する気持ちに変わりはない」

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