震災直後の日本にエール。MotoGP王者のストーナーは誠実であり続けた (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 その後、多少の紆余曲折はありながらも、秋の日本GPは無事に開催された。そのレース後にもあらためて、「当初に感じていた不安と比べて、実際にもてぎでレースを終えた今、日本に対するリスク評価は変わりましたか」という問いを投げかけてみた。

 この時も、ストーナーは態度をはぐらかすことなく、以前に抱いていた印象とレース後の考えの変化について、真摯な口調で述べた。

「僕が思うには、何カ月も前から選手たちは(日本に行くことに)プレッシャーや不安を感じていたんだ。時間の経過とともに状況が明らかになってきたので、渡航を決断するのはそう大変なことではなくなった。実際に(日本に来て)この目で見てみると、問題はなさそうだとわかった。まだ断定的なことは言えないのかもしれないけど、来年になれば状況はもっとハッキリしていると思う」

 この日本GP忌避(きひ)を巡る一連の質問では、ストーナーは常に誠実な対応に終始してくれた印象が強い。彼には今も強い敬意を抱くゆえんである。

 そして日本GPの翌戦、2週間後の母国オーストラリアGPで、ストーナーは自身2回目となる最高峰クラスチャンピオンを獲得した。ドゥカティでタイトルを獲得した07年以来、彼はこのホームGPで毎年優勝を飾っている。地元スターの優勝、かつ王座獲得という離れ業に、満場のファンが歓喜に沸いたことは言うまでもない。

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