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リーマンショック発生でF1を目前に帰国。それでも塚越広大は走り続ける (2ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

■プロとしてお金をもらって走るようになった2009年以降、塚越は国内のトップカテゴリーで10シーズン以上も戦ってきた。幾多の困難を乗り越え、これまで競争の激しい世界で生き残ってきた彼は、「速く走ることだけではプロとして不十分」と語る。その真意とは。

――プロのドライバーとして生きていくうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

「メーカーやチームがお金を払ってでも乗ってもらいたいというのがプロだと思います。ただプロになっても、レースの世界では毎年若くて勢いのあるドライバーがどんどんステップアップしてきますし、最近は海外からも有力ドライバーが続々と日本のカテゴリーに参戦してきています。そんな中でも常にチームやメーカーから必要とされるドライバーであり続けなければならないと思います。

そのために大事なのは、単に速く走るだけでは不十分です。チームのスタッフを牽引して、クルマを開発する能力も必要です。またメーカーの看板を背負うわけですから、人をひきつける魅力があり、発信力があることも大事になっています。たくさんの選手がいる中で、自分がチームやメーカーに対して何ができるのかを常に問われますし、それに応えていくのがプロだと思います」

スーパーフォーミュラでは今季ここまで9位が最高(写真提供/ホンダ)スーパーフォーミュラでは今季ここまで9位が最高(写真提供/ホンダ)――これからモータースポーツの世界でプロを目指す子どもたちに対しては、どんなアドバイスを送りますか?

「プロになると速く走るのは当たり前で、上のクラスに行けば行くほど技術の差は本当に少なくなっていきます。同じマシンで走ったら、ほとんど同じようなタイムで走ってくるはずです。では、どこで差がつくかといえば、最終的にはレースに対する熱量や情熱になっていきます。

少しでもクルマを速くするために何ができるのか、それを常に考えていれば、日々の生活での食事やトレーニングの方法が変わってきます。そういう小さいことの積み重ねが結果となって表われてくる。それは、どのスポーツでも、あるいは仕事でも一緒だと思います。熱意をもって、いかに自分が打ち込んでいる競技に真剣に向き合い、夢中になることができるのか。そこがすごく大事だと思います」

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