「抜けないモナコ」の壁は高く。レッドブル・ホンダ、優勝に一歩届かず (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「ルイスはグリップがなくて、かなりタイヤをマネジメントしていたし、ある段階でタイヤを壊してしまってペースが落ちていた。抜くことさえできれば、僕たちのほうがかなり速いということはわかっていた。だから、ルイスにプレッシャーをかけ続けて、ミスを誘ったんだ」

 当初は抑えて走っていたフェルスタッペンも、抜くためにプッシュに切り替えた。5秒加算ペナルティが決まり、抜かなければ4位まで落ちてしまうことが確実だったからだ。

「ペナルティを受けることがわかってから、プッシュをし始めたんだ。ルイスは最初からかなりペースを抑えて走っていたけど、僕がプッシュすれば彼もプッシュせざるを得なくなるし、それによって彼のタイヤを苦しめることができるからね。それこそが、僕にとって彼を抜く唯一の方法だった」

 とくに、ミラボーからフェアモントヘアピンでペースを抑えてタイヤを守るハミルトンに、フェルスタッペンが急接近する。しかし、ポルティエを曲がってトンネルの全開区間に入ると引き離され、ヌーベルシケインでオーバーテイクを仕掛けるまでには至らない。

 残り10周を切ったところで「モード7」という通常のレースモードよりもパワフルなパワーユニットのセッティングに切り替えるが、メルセデスAMGもオーバーテイクボタンを使用することで防御するよう、ハミルトンに許可する。残り2周でフェルスタッペンがインに飛び込むのが遅すぎて、両者が接触して際どいところでクラッシュを回避するという場面もあった。

 最高速は両者ともにほぼ同等だったにもかかわらず、そうなってしまったのは、フェルスタッペンはヘアピンとポルティエの脱出で思うようにスロットルを踏み込むことができず、次の全開区間に向けて引き離されてしまったからだ。

 それは、トルクマップの選択ミスが影響していた。

「彼はターン5~6でかなりゆっくり走っていたからヘアピンではかなり接近できたけど、ターン8を立ち上がったところではもう引き離されてしまっていたから、選択肢はそう多くはなかった。残り数周になったところでオーバーテイクを試してみようと飛び込んだけど、うまくいかなかった。ピットストップ時にトルクマップを戻すのを忘れて、スタートマップのまま走ることになったので理想的な状況ではなかった」

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