MotoGP中上貴晶、勝負の2年目。「自分の手で来季シートを掴む」 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文・撮影 text & photo by Nishimura Akira

 自分の場合は、タイヤ1本分だったり、ひどいときは2本か3本の距離を置いて、相手のペースに合わせてしまっていました。自分の走りに自信がなかったのかな、と思います」

―― それを乗り越えるためには、何が必要ですか?

「去年の自分の問題を洗い出してみると、接戦のバトルに弱いということがわかりました。メンタルでも、あと技術面でもそうですね。去年はレースでしかバトルを勉強できなかったので、余計に時間もかかってしまいました。

 去年のライバルは、同じようにMoto2から昇格して同じホンダ陣営だったフランコ(・モルビデッリ/今季はヤマハのサテライトチームに移籍)で、彼のトレーニングを見ていると、VR46アカデミー(→バレンティーノ・ロッシが若手ライダー育成を目的として立ち上げたプロジェクト)の若手たちといつもバトルをしてトレーニングしているので、『これが自分に足りないものだ』と思いました。トレーニングでも毎日バトルをしている彼と自分の差は、そこにあるのか、と。

 スピードではフランコに劣っていない自信があるのに、レースになると彼が前でゴールするほうが多かった。つまり、レースでは自分の弱みが顕著に出ていたんですね。だから、冬の期間中はできるだけ人を呼んで接戦を取り入れるようにし、一緒にトレーニングをしてきました」

―― その経験を重ねることが、バトルの精神的な余裕につながる、と。

「去年はなぜ接戦をできなかったのかというと、相手との距離感を掴みきれずに『ぶつかってしまうんじゃないか』と考えてしまったり、相手の動きに対しても瞬時に対応できなかったりした自分がいたので、そこは認めなければいけないですね。一番の弱みだったと思います」

―― Moto2時代の中上選手は、決勝レースのグリッドにつくと、いつも優勝するつもりで臨んでいたと思います。最高峰初年度の去年は、おそらくそうではなかったようにも見えました。

「そうですね。まったく違いました。レースに出る以上は優勝が一番の目標ですが、経験や条件も含めて、常にそこを目指せる環境ではありませんでした。では、自分たちに実現できるのはどこだ、と考えたときに、『トップテンは行けるよね』ということは見えたので、シングルフィニッシュを目標にしていました」

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