エアレース開幕戦で室屋義秀が完全優勝。「新ルール」に見事に適応
レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2019年開幕戦がUAE・アブダビで行なわれ、室屋義秀が優勝。しかも、予選トップからの優勝という、自身初の"ポール・トゥ・ウィン"を成し遂げた。
2年ぶりの年間総合優勝を目指す室屋にとっては、「シーズンが始まったばかりで、まだまだ先は長いが、いいスタート」である。
エアレース開幕戦で予選トップからの優勝を飾った室屋 勝つべくして勝ったレース――。すべてのフライトを通じて、一度もペナルティを受けることがなかった室屋の落ち着いたフライトを振り返れば、そう表現してもいいのだろう。
しかしながら、室屋の安定感とは対照的に、この日のレース全体を俯瞰すると、"荒れ模様"だった印象は否めない。
というのも、今回のレースではラウンド・オブ・14からファイナル4までに、全部で25本のフライトが行なわれたのだが、そのうちノーペナルティだったのは半数に満たない12本。通常のレースに比べ、かなり多くのペナルティが発生した。
しかも、ペナルティがあった13本のフライトのうち、8本までがゲート14(1周目のゲート7)でのインコレクトレベル(ゲートを水平に通過しない)、あるいはパイロンヒット(ゲートに接触する)のいずれかが起きているのだ。
いわば、"魔のゲート14"。そこではいったい、何が起きていただろうか。
話は、1日前にさかのぼる。
予選が行なわれたその日、レーストラックに流れ込む風は弱く、北東から南西方向へ緩やかに吹いていた。レーストラック上では、スタートゲートから見てゲート4方向へ吹いていた、と言えばわかりやすいだろうか。
予選でのフライトは、全14パイロットが2本ずつの計28本。うち8本のフライトで9つのペナルティが起きているが、うち5つはバーティカルターンでのオーバーG(最大荷重制限の超過)である。
なぜ、これほど多くのオーバーGが起きたのか。その理由はわかりやすい。
シーズンレビューでも記したが、今季のレッドブル・エアレースではオーバーGのペナルティ基準が変更になっている。
昨季までは10Gを制限基準とし、10G以上が0.6秒以上続けば2秒のペナルティだったが、今季からは超過時間にかかわらず、11Gに達したら1秒のペナルティとなった(12Gに達した時点でDNF=途中棄権となるのは変更なし)。
つまり、パイロットにとってみれば、このルール変更によって「0.6秒以内なら最大11.9Gまでかけられる」という利点がなくなってしまったわけだ。今までと同じ操作で飛べば、確実にペナルティ。体が覚えた感覚を変えることの難しさを口にするパイロットは多かった。
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