戴冠を決めたハミルトンにベッテルが「辞めるな」と言った理由 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 夏休み前のハンガリーGPの時点で、自分たちが最速でないことはわかっていた。しかし、それでも勝つことができたんだ。フェラーリにとっては衝撃的な事実だったかもしれない。

 そしてモンツァ以降はさらに強く、僕らは階段を上がり続けた。このメキシコでだってフェラーリのほうが速かったけど、僕らはそのマシンパッケージを彼らよりもうまくオペレートすることができた。それがポイントだったんだ」

 自分たちの限界を超えること――。そのためにベッテルとフェラーリの存在が果たした意味は大きかった。ライバルが強力だったからこそ、ハミルトンとメルセデスAMGはさらに上を目指し、自分たちの限界を超え続け、未知の領域へと辿り着くことができたのだ。

「今年1年を通して、僕らは何度も試されてきた。最速のパッケージではなく後れを取った週末でも、僕らは自分たちを信じることを忘れずに何かを手に入れ、勝利を勝ち獲ったりしてきた。マシンから特別なラップを引き出したり、特別な時間だと感じたことが何度もあった。本当に魔法のような経験だったと言っていいだろう」

 独走優勝のレースよりも、心が躍るような激しいバトルに満ちたレースのほうがいい。ハミルトンはことあるごとに、そう口にしてきた。今もその言葉に変わりはない。

 そういう意味で、ベッテルとフェラーリが速さを見せ、ハミルトンの牙城を脅かし続けた今シーズンは、ハミルトンにとってタフであると同時に最高の日々だった。

「僕はモンツァで繰り広げたようなレースが好きだ。あれこそが僕が求めるレースだし、ああいう好バトルが毎戦のように繰り広げられれば、僕としてはこんなにうれしいことはない。

 ライバルと直接やりあい、どちらが先にブレーキを踏むか、どちらが速いのか、それを決めるのが究極の競争だと思う。プレッシャーがかかる状況で、いかにメンタルの平穏を保てるかという勝負でもある。僕はそういう競争は大歓迎だし、実際に今年はそういう場面が何度もあった。プレッシャーのなかで、自身の能力を証明してこられたんじゃないかと思っているよ」

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