ドライバーにしっくりこないホンダ新エンジン。鈴鹿までに成熟できるか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 土曜日からはスペック2に戻すことになり、図らずも同じサーキットで直接新旧スペックを比較することになった。それでもドライバーたちは、両者で大きな差があったとはいわなかった。

 その理由は、スペック3が決してスムーズな滑り出しとはいかなかったからだ。

「アップシフトがすごくハーシュ(引っかかりが感じられる状態)だ」
「最終セクターのトルクが思いどおりの状態じゃない」

 フリー走行でドライバーたちは無線でそう報告し、パワーの向上とは別次元の、通常運用の部分で彼らにとってナチュラルに感じられない状態であることを訴えた。

 パワーユニットメーカーはベンチテストでさまざまな状況を想定してシミュレーションを行ない、セッティングを煮詰めてからサーキットへと持ち込んでいる。ただ、どうしても台上試験と実走ではズレがあるものだ。最初から完璧なエンジンなどなく、実際に走りながらセッティングを煮詰めていくのが当たり前である。

 初日の走行を終えた時点でスペック3の煮詰め度合いを聞くと、ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語った。

「50%というほどではありませんが、90%や95%というほど高くもありませんね。ギアボックスであったり、車体と合わせていかなければならない部分もありますし、ここは低速コーナーの連続ですから、ドライバビリティなども改善の余地はあります。

 基本的なところは問題もなく、(性能面も)手応えがあって、まったく走れないわけではありません。十分に走れるレベルではあります。ただ、レースに臨むにはまだもうちょっと手を入れて、きちんとする必要があるということです」

 ホンダのエンジニアは、ドライバーたちからのフィードバックとデータを突き合わせながら作業にあたったが、ソチのレース週末中に100%に近い状態にするのは難しそうだった。そのため予選・決勝は、スペック2に戻して戦うことを決めたのだ。

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