鈴鹿F1日本GP。「セナ・プロ対決」は感情むき出しのドラマだった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 コンビ初年度は好敵手と言ってもいいふたりだったが、この年の第2戦・サンマリノGPで「スタート直後の1コーナー以降はしばらくバトルをしない」というチーム内の紳士協定に反してセナがプロストを追い抜いたことに端を発し、最速の座を巡るふたりは互いに口もきかないほどの険悪な仲となる。当時F1を統括していたFISA(国際自動車スポーツ連盟)のジャン=マリー・バレストル会長がプロストと同じフランス人ということもあって、政治的な要素も絡み合い、シーズンを経るなかでドロドロとした確執は深まっていった。

 鈴鹿で勝って最終戦にタイトル争いを持ち越したいセナと、セナが勝たなければ自身3度目のタイトルが決まるプロスト。そのふたりの置かれた状況差が、鈴鹿に挑む姿勢となって表れた。

 ドライバーズサーキットの鈴鹿で、セナは芸術的な走りを見せてポールポジションを奪う。対するプロストはコーナリングでセナに対抗することはやめて、ウイングを寝かせてストレート重視で戦う。スタートで出遅れたセナはレース終盤の47周目にようやくプロストを追い詰め、シケインでインに飛び込む。

 その瞬間、2台はもつれ合うように接触――。

 その場でタイトル獲得を確信してマシンを降りたプロストに対し、セナはフロントウイングを失いながらも走り続け、ベネトンのアレッサンドロ・ナニーニを抜き去り、トップでチェッカードフラッグを受けてタイトル争いの望みを最終戦につないだ......はずだった。

 ところがレース終了後に、セナには失格の裁定が下った。接触直後にシケインのランオフエリアから直接最終コーナーへとアプローチし、シケインをカットしたというのがその理由だった。だが、シケインを逆走してコースに復帰するというのは常識外れであり、マシンを降りてコントロールタワーに駆け込んだプロストとFISAの政治色もにじむ裁定だった。セナがインに飛び込んだ際のプロストのターンインが通常よりも早く、セナのマシンに寄せていくようにも見えた。

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